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Kinimba (Cancion de Makumba)    
  Canções nordestinas do folclore brasileiro
キニンバ(マクンバ地方の歌)  
     ブラジルの民謡

詩: ラテン民謡 (canción popular,-) 
      

曲: ブラーガ,フランシスコ (Francisco Ernani Braga,1868-1945) ブラジル   歌詞言語: ?


O' Kinimbá!Kinimbá!
Da da ôkê Kinimbá!
Salô ajô nuaiê...
O' Kinimbá!Kinimbá!

オオ、キニンバ、キニンバ
ダドーケ、キニンバ
サロ シャアヨ ヌァイエ
オオ、キニンバ、キニンバ

キニンバ、というのは南米につれてこられた黒人たちの信じる神様「ジャンゴ」をたたえる歌。「キニンバ」というのはその神様が降臨した土地の名前だそうです。
以前ご紹介したヴィラ=ロボスの歌「ジャンゴ」に通じるような歌で、事実ここで使われている言葉もヴィラ=ロボス同様現地の言葉の響きをもとに作曲者が自由に創作したもののようです。
ところが面白いのは、「ジャンゴ」が私たちがその種の歌に期待している通りのバーバリズム溢れる歌であるのに対して、こちらは不思議なことに西洋的、とさえ言える端整なたたずまいをした歌であることです。
どちらかというとキリスト教の賛美歌を思わせるそのメロディは、まさにアマゾンの密林の中に静かに建っている教会の中から聞こえてくる祈りの声を思わせるような不思議な響き。スピリチュアル(黒人霊歌)の香りも漂わせながら、最後はつぶやくような祈りの言葉が、ピアノに再現される歌のメロディと絡み合いながら消え入るように終わります。

フランシスコ・ブラーガはオペラや管弦楽作品を多く残したヴィラ=ロボスより1世代上の作曲家。この「キニンバ」の他にもブラジルのフォークソングに基づく作品をいろいろ取り上げています。ノリノリのメロディの労働歌から悲しい恋歌まで非常に多彩なその作品群(ブラジル各地方から集めている)は、アメリカのコープランドの書いたアメリカのフォークソング集のブラジル版。
豊穣な音楽の魅力にあふれるブラジルの音楽を幅広く楽しめる素敵な作品です。

ジャンゴのところで紹介した、スペインの名歌手テレサ・ベルガンサがなぜか入れた南米歌曲集にこのブラーガのフォークソング集が6曲収録されています(Claves)。
が、ジャンゴのときも感じたのですが、どうも彼女の南米歌曲は私にはしっくりこない...
彼女の歌うスペインの歌曲はどれも素敵なのになんとも不思議ですが、考えてみると同じスペイン・ポルトガル語圏であるにも関わらず、ヨーロッパと南米の両方を得意としている歌手の人って誰もいないような気がしてきました。

この曲の初演者で、1930〜40年代のニューヨーク・メトロポリタンオペラで活躍したブラジルのソプラノ、ビドゥ・サーヤオの録音があるようですが(Sony)、これは私は未聴。

今気に入って聴いているのは、アルゼンチン出身のメゾ、アリシア・ナーフェが歌っているアルゼンチン歌曲集(Arte Nova。現在はOEHMSに移っている?)。
アルゼンチンと銘打っていながらサティやクルト・ワイルの歌が混じっている不思議なCDですが、バンドネオンの伴奏の入ったアストル・ピアソラの歌曲とかも入っていて素敵です。このCDにブラジル代表?としてこのブラーガの作品が5曲、いずれも生き生きと歌われていますので、まず聴いてみるならこれかと。

( 2004.08.20 藤井宏行 )


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