椰子の実 |
|
名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実一つ 故郷(ふるさと)の岸を離れて 汝(なれ)はそも波に幾月 旧(もと)の木は生(お)いや茂れる 枝はなお影をやなせる 我もまた渚を枕 孤身(ひとりみ)の浮寝の旅ぞ 実をとりて胸にあつれば 新たなり流離の憂 海の日の沈むを見れば 激(たぎ)り落つ異郷の涙 思いやる八重の汐々 いずれの日にか故国(くに)に帰らん |
|
( 2016.11.13 藤井宏行 )