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Mein Liebster ist so klein,daß ohne Bücken    
  Italienisches Liederbuch
私の恋人はとってもちっちゃいの  
     イタリア歌曲集

詩: ハイゼ (Paul Heyse,1830-1914) ドイツ
    Italienisches Liederbuch-Rispetti 34 Mein Liebster ist so klein,daß ohne Bücken 原詩:イタリア詞

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Mein Liebster ist so klein,daß ohne Bücken
Er mir das Zimmer fegt mit seinen Locken.
Als er ins Gärtlein ging,Jasmin zu pflücken,
Ist er vor einer Schnecke sehr erschrocken.
Dann setzt' er sich ins Haus um zu verschnaufen,
Da warf ihn eine Fliege übern Haufen;
Und als er hintrat an mein Fensterlein,
Stieß eine Bremse ihm den Schädel ein.
Verwünscht sei'n alle Fliegen,Schnaken,Bremsen
Und wer ein Schätzchen hat aus den Maremmen!
Verwünscht sei'n alle Fliegen,Schnaken,Mücken
Und wer sich,wenn er küßt,so tief muß bücken!

私の恋人はとってもちっちゃいの、だってあの人ったら、かがまなくても
垂れた巻き毛で私の部屋掃除が出来ちゃうくらいなんだから。
ある時なんか、あの人がジャスミンを摘みにお庭に出たら、
カタツムリに出くわして驚いたのなんのって。
それでひと息つこうとしてお家に入ったら、
今度はハエがいて、ひっくり返されちゃったの。
それから私んちの窓の方に向かって行ったんだけど、
そうしたらアブがあの人のオツムに一刺し食らわしたのよ。
もう嫌になっちゃう、ハエもカタツムリもアブも、
そしてマレンマ生まれの彼氏を持った誰かさんも!
もう嫌になっちゃう、ハエもカタツムリもアブも、
そして彼氏とキスする時にこんなに深く身をかがめなくちゃいけない誰かさんも!


第1曲で小さきものへの愛着を歌っていたが、この曲では小さいがゆえの苦労をコミカルに歌っている。一寸法師のような彼氏の災難話を告白したあと、彼氏への同情と同時に、こんな思いをしてまでも彼氏が好きでたまらない自分自身に対するわけの分からない心境が、嘆き口調で思わず吐露される。
自嘲的に見せかけてはいるが、本音は小さいものへの讃歌なのではないか。
ちなみにマレンマ地方(Maremma)はイタリア中央部の西側トスカーナ州のグロッセート県の一帯を指すそうで、かつては湿原でマラリアが多く発生し、いやなことの代名詞のように言われていたとのこと。この詩の小人さんをマレンマ出身にしたのはそういう意味も含めているのかもしれない(現在は美しい自然公園もある肥沃な農村地帯だそうです。田中佳代子氏のレポートを参考にさせていただきました)。

アーメリング&ボールドウィン:ちょっとしたユーモラスな味つけが彼女は実に上手い。「ハエもカタツムリも…」と歌う箇所の声の跳ね上げ方など、「嫌になっちゃう」という気持ちが切実に伝わってくる。ボールドウィンも一心同体。
ツィーザク&アイゼンローア:語り口、声色など、とにかくチャーミング。
シュヴァルツコプフ&ムーア:言葉に込められた表情の説得力はさすが。最後の「buecken」の情けなくて笑ってしまうという感じの表現は彼女だけのものだ。
ほかにマティス&エンゲル、イソコスキ&ヴィイタサロ、ボニー&パーソンズもいい。

( 2003.11.4  フランツ・ペーター )


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