Schifferlied (Altjapanisches Kagura-Lied) Op.47-1 Vier Japanische Lieder |
船頭の歌 (古い日本の神楽歌) 4つの日本の歌曲 |
Das Steuer des Bootes im entendurchschwärmten Hafen von lna haltet es sorglich, dass nicht kent're der Kahn! Denn er trägt auch mein Weibchen, das jugendlich frische, und er trägt auch mich selber. Lasst nicht kentern den Kahn! |
舟の櫂は 鴨の群れで一杯のイナの港で 注意深く漕がねばならぬのだぞ 舟が転覆せぬように! なぜならばわが愛しの妻が乗っているからだ 若く 麗しい妻が そしてわが許へと運ばれてくるのだ 舟がどこかへ捕えられぬようにな! |
19世紀末から20世紀初めにかけて日本の和歌をドイツ語に翻訳したものに多くのクラシック作曲家たちが曲をつけておりますが、これはかなり珍しいセレクションです。楽譜によってはこの詩の翻訳者をピエール・ルイスとしているものもあるようですが、さすがに「ビリティスの歌」の作者であるフランス人作家が日本語の和歌をドイツ語に訳しているとは考え難く、これは明らかに誤りなのだと思います。E.Selenkaという人の「Sonnige Welten」という著書にこの歌詞とともに、Dr.Florenzが東京に住んでいたときに書いたもの、という記載がありましたので、この歌曲集の次の曲がLied and Text Pageで紹介されておりましたのと同様このFlorenzという人の翻訳したものだとここでは結論つけておきます。
キーンツルという人は日本ではほとんど知られていない作曲家ですが、R.シュトラウスの音楽をもっとポップにした感じのメロディで本当に奇麗な歌曲をたくさん書いた人です。この曲はまるでヴェニスの舟歌のようにたゆたうメロディで夢見るような優美さ。CPOレーベルにある歌曲集録音に4曲全部収録されております。
この歌の原詩は神楽歌「階香取(しなかとり)」。もとの詩はこんな感じです。
本歌 「階香取るや 猪名の湊に あひそ 釣る船の 舵良く任せ 船傾くな 船傾くな」
末歌 「若草のや 妹物語 あひそ 我も乗りたりや 船傾くな 船傾くな」
猪名というのは今の尼崎のあたりなのだそうです。
( 2016.10.15 藤井宏行 )