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Ballade des gros dindons    
 
太った七面鳥のバラード  
    

詩: ロスタン (Edmond Eugène Alexis Rostand,1868-1918) フランス
      Ballade des gros dindons

曲: シャブリエ (Alexis Emmanuel Chabrier,1841-1894) フランス   歌詞言語: フランス語


Les gros dindons,à travers champs,
D'un pas sollennel et tranquille,
Par les matins,par les couchants,
Bêtement marchent à la file,
Devant la pastoure qui file,
En fredonnant de vieux fredons,
Vont en procession docile
Les gros dindons!

Ils vous ont l'air de gros marchands
Remplis d'une morgue imbécile,
De baillis rogues et méchants
Vous regardant d'un oeil hostile;
Leur rouge pendeloque oscille;
Ils semblent,parmi les chardons,
Gravement tenir un concile,
Les gros dindons!

N'ayant jamais trouvé touchants
Les sons que le rossignol file,
Ils suivent,lourds et trébuchants,
L'un d'eux,digne comme un édile;
Et,lorsqu'au lointain campanile
L'angelus fait ses lens din! dons!
Ils regagnent leur domicile,
Les gros dindons!

Prud' hommes gras,leurs seuls penchants
Sont vers le pratique et l'utile,
Pour eux,l'amour et les doux chants
Sont un passetemps trop futile;
Bourgeois de la gent volatile,
Arrondissant de noirs bedons,
Ils se fichent de toute idylle,
Les gros dindons!


太った七面鳥たちが野原を横切り、
おごそかに、しずしずと
朝であろうと、夕方であろうと
一列になって大行進。
通りかかる牧童たちの前を
古い歌を鼻で歌いながら、
行儀よく列を組んで歩いて行く
太った七面鳥たち

でっぷり太った商人のように
尊大さあふれる態度で歩き
横柄で意地悪な代官さまのように
冷たい視線を投げかける
赤いとさかのペンダントを揺らして
アザミの花の咲く野原の中で
おごそかに会議を開いている
太った七面鳥たち

決して心を動かすことはない
ナイチンゲールの歌声にも
重々しく、よたよたとついて行く
中の一羽、市長のように堂々としたのに
そして遠くの鐘楼の
時を告げる鐘がディン、ドンと鳴れば
みんなでねぐらに帰っていく
太った七面鳥たち

この太っちょで勿体ぶり屋の好きなものは
実用的で役に立つものだけ
やつらに取っては恋だの甘い歌など
取るに足らない暇つぶし
鳥の世界のブルジョアは
黒い太鼓腹を膨らませて
田舎の恋物語など相手にしない
太った七面鳥たち



フランス音楽のエスプリという言葉は、まさに彼の歌曲のためにあるのではないかと思うことがあります。中でも4曲の動物にちなんだ曲、この曲と「バラ色の豚たちの牧歌」「蝉」「小さなアヒルたちのヴィネラル」は、にじみ出てくるユーモアといい、一度聴いたら忘れられないお洒落なメロディーといい、彼のさほど多くない歌曲作品の中でもひときわ輝いています。
この七面鳥のバラードは、よたよたと歩く七面鳥の群れを表すかのようなちょっとぎこちない歌の部分と、なぜか間奏で突然出てくる軽やかで生き生きとしたメロディー(あのモーツァルトのドン・ジョバンニのセレナードの伴奏の旋律です。どういう意味があるのかは分かりませんけれど)とのコントラストが絶妙で、なんだかとても嬉しくなってしまいます。

この4曲を、カミーユ・モラーヌは動物にちなんだ歌曲集ということでラヴェルの「博物誌」などと一緒に録音してくれています。これは言葉の美しさといい、気品あふれる歌い方といい非常に素晴らしいのですが、欲をいうとこの曲にはもっとくだけたユーモアがあってもいいかなという気がします。その辺が良いなと思ったのはフランス歌曲をたくさん録音してくれているラプラントのバリトンで、飄々とした感じがとてもハマっています。
私はシャブリエの歌曲集が彼のベストフォームではないかと思っていますがいかがなものでしょうか?
1998.08.02 (2003.9.14改訂)

( 2003.09.14 藤井宏行 )


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