Und shla:fst du,mein Ma:dchen Spanisches Liederbuch(Weltliche Lieder) |
世俗歌曲第27番『眠りについている君、僕の恋人よ』 スペイン歌曲集_世俗歌曲集 |
Und schläfst du,mein Mädchen, Auf,öffne du mir; Denn die Stund' ist gekommen, Da wir wandern von hier. Und bist ohne Sohlen, Leg' keine dir an; Durch reisende Wasser Geht unsere Bahn. Durch die tief tiefen Wasser Des Guadalquivir; Denn die Stund' ist gekommen, Da wir wandern von hier. |
眠りについている君、僕の恋人よ さあ起きるんだ、そして戸を開けてくれ だって時が来たんだから 僕らがここをたつ時が 何も持たず 裸足でおいで 僕らの進む道は 水の中をゆくのだから あのグァダルキヴィル川の 深い深い流れを渡って 僕らがここをたつ時が来たんだ ここをたつ時が・・・ ※グァダルキヴィル川=スペイン南部セヴィリャを流れる川 |
1分あまりの小品。奇妙な詩です。真夜中か未明に恋人の家を訪れて、旅に出るときが来たと言う。それも何も持たずに裸足で良い、何故なら水の中へ行くのだからと言うのですが、セヴィリャを流れるグァダルキヴィル川は船が航行できる大河です。しかも渡った後のことを考慮していない。なにやら入水心中の誘いのようですが、既訳でそのようなことを示唆したものはなく、ヴォルフの曲も舟歌風の淡々としたものです。”Bewegt”(速く)と指示された楽譜はピアニッシモ主体で、「僕らの進む道は水の中をゆくのだから・・・あのダルキヴィル川の」のところでフォルテに高まり、また退いていきます。
フィッシャー=ディースカウの新旧二種はいずれもメリハリの効いた歌でわかりやすく、プライは陶酔的に緩やかに、ベーアはその中間といったところでしょうか。楽譜の曲順を変更して、独自の順列でストーリーを作っているベーアとオッターのディスクではこの曲は曲集の最後から三番目に置かれ、次が「来てくれ、おお死よ、夜にまぎれて」そして「もう行って、いとしい人、もう行って」となっています。これはたぶん死の時を愛の時と解釈しているのでしょう。確かに隠喩的な求愛の歌ともとれますが・・・。
スペインの戯曲作家によるこの詩、おそらく独立のものではなく特定の戯曲の作中のもので、なんらかのストーリーの前後関係があるのではと想像しています。
( 2003.3.12 甲斐貴也 )