Tief im Herzen trag'ich Pein Spanisches Liederbuch(Weltliche Lieder) |
世俗歌曲第23番『心の奥深くわたしは苦しみを秘め』 スペイン歌曲集_世俗歌曲集 |
Tief im Herzen trag' ich Pein, muß nach außen stille sein. Den geliebten Schmerz verhehle tief ich vor der Welt Gesicht; und es fühlt ihn nur die Seele, denn der Leib verdient ihn nicht. Wie der Funke frei und licht sich verbirgt im Kieselstein, trag' ich innen tief die Pein. |
心の奥深くわたしは苦しみを秘め 決してそれを表に出すことはない この愛しい苦痛を世俗の人たちの前では 深く覆い隠している それを感じることのできるのは魂だけで 肉体にはその資格がないのだから 奔放にきらめく火花が 火打ち石の中に身をひそめるように わたしは苦しみを内に深く秘めている |
作者はルネッサンス期のポルトガルの詩人。冒頭の「心の奥深く」と最終行の「内に深く」は、参照した三種の訳では冒頭の方に揃えて同じになっていますが、後の方はその前の火打ち石の比喩に対応して「心」ではなく「内側」としていると思い、より原文に忠実に訳してみました。この詩にはシューマンも作曲しています。
ヴォルフの作曲はその詩にふさわしくほの暗く静かなもので、渋く地味な作品です。ピアノは穏やかに慎ましく火花のきらめきを表しているようです。ヴォルフ協会SP復刻盤のヤンセン、フィッシャー=ディースカウの二種、そしてベーアと、バリトンばかり4種の録音を聴きました。得意のピアニッシモを駆使したフィッシャー=ディースカウ氏はいつもながら鮮やかです。
( 2003.3.15 甲斐貴也 )