The New River |
新たなる川 |
Down the river comes a noise! It is not the voice of rolling waters. It's only the sound of man, phonographs and gasoline, dancing halls and tambourine; Killed is the blare of the hunting horn The River Gods are gone. |
川を下ってノイズがやってくる それは流れる水の声ではない それはもっぱら人間の出す音だ 蓄音機 ガソリンエンジン ダンスホールにタンバリン 殺されるのは狩の角笛の響き 川の神々は去って行ってしまった |
川が出てくると黒人霊歌を連想するところですが、ここで描写されているのは近代社会によって汚染された川の情景。ピアノの狂ったようなシンコペーションに歌もシニカルに絡みながら吐き捨てるように歌います。最後は嘆きに沈むように声は引き延ばされますが、叩きつけるピアノの強打で歌は幕を閉じるのでした。途中でピアノに出てくるジャズっぽい響きはダンスホールの描写でしょうか。暴力的な音楽の合間にちらっと姿をみせるのが粋なところです。
この音楽、最初は1906年に「破壊された川(Ruined River)」という歌詞のない重唱曲に、その後1911年には「ガソリン機関がハウサトニック川を殺す」という物騒な題の合唱と室内オーケストラ作品になり、現在良く演奏されるピアノ伴奏の独唱曲となったのは1921年のことのようです。1906年と1911年に書かれた作品は耳にできませんでしたが、1916年のオーケストラセット第1番に「Ruined River」の題で収録されているものを見つけられました。
( 2016.01.24 藤井宏行 )