Blow,blow thou winter wind |
吹けよ 吹け 冬の風よ |
Blow,blow thou winter wind, Thou art not so unkind As man's ingratitude; Thy tooth is not so keen Because thou art not seen, Although thy breath be rude. Heigh ho! sing heigh ho! unto the green holly: Most friendship is feigning,most loving mere folly: Then,heigh ho! the holly! This life is most jolly. Freeze,freeze thou bitter sky, Thou dost not bite so nigh As benefits forgot: Though thou the waters warp, Thy sting is not so sharp As friend remember'd not. Heigh ho! sing heigh ho! unto the green holly: Most friendship is feigning,most loving mere folly: Then,heigh ho! the holly! This life is most jolly. |
吹けよ 吹け 冬の風よ お前はそんなに不親切ではないぞ 人が恩知らずでいるほどには お前の歯はそんなに尖ってはないぞ お前は目には見えないのだから 確かにお前の息は荒っぽいが ヘイ ホー!歌えや ヘイ ホー!緑のヒイラギに 友情はあらかた見せかけ 恋愛はただの愚行 だから ヘイ ホー!ヒイラギよ! この人生は馬鹿騒ぎ 凍りつけ 凍りつけ 冷たい空よ お前が噛み付いたって何てことはない 恩を忘れてしまうよりは全く お前は水を凍らすけれど お前の一刺しはそんなに痛くない 友達を思い出さなくなるよりは全く ヘイ ホー!歌えや ヘイ ホー!緑のヒイラギに 友情はあらかた見せかけ 恋愛はただの愚行 だから ヘイ ホー!ヒイラギよ! この人生は馬鹿騒ぎ |
シェイクスピアの喜劇「お気に召すまま」第2幕の第7場、弟の裏切りに遭って領地を追われ、アーデンの森に隠れ住む公爵のもとに、嫉妬に狂って自分を焼き殺そうとした兄のもとを召使と共に逃れてきた物語の主人公オーランドーがやってきたときに、公爵に従って森に共に住む貴族アミアンズが彼らをもてなすために歌う歌です。もてなす側も、そしてもてなされる側も人の不人情の犠牲になっているわけで、そのあたりを自虐的に歌詞に織り込んで、しかし決して暗くなることなく力強く歌っています。
ブリティッシュ・ライト・ミュージックの大御所アルバート・ケテルビーは、わたしが子供の頃は小学校の音楽の教科書にその代表作「ペルシャの市場にて」が音楽鑑賞の題材として載っていましたのでおなじみの名前でしたが今はどうなのでしょうか。
そんな彼の若い頃の作品にこのシェイクスピア戯曲からの歌があるのを知って驚かされました。1898年の作ですが、1923年に作曲者自身の指揮する管弦楽伴奏でA.ノーマンというバス歌手が歌った録音がNaxosレーベルでCD復刻されておりそれで聴けました。彼の作品らしく雄弁でドラマティックな聴きやすいものですが、実際の舞台で使われたわけではないようです。
( 2016.01.20 藤井宏行 )