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Morgentau    
  Sechs Lieder für eine Frauenstimme
朝露  
     女声のための6つの歌

詩: 不詳 (Unknown,-) 
      

曲: ヴォルフ (Hugo Wolf,1860-1903) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Der Frühhauch hat gefächelt
Hinweg die schwüle Nacht,
Die Flur holdselig lächelt
In ihrer Lenzespracht;
Mild singt vom dunkeln Baume
Ein Vöglein in der Früh,
Es singt noch halb in Traume
Gar süße Melodie.

Die Rosenknospe hebet
Empor ihr Köpfchen bang,
Denn wundersam durchbebet
Hat sie der süße Sang;
Und mehr und mehr enthüllet
Sich ihrer Blätter Füll',
Und eine Träne quillet
Hervor so heimlich still.

朝の息吹がそよぎ、
うっとうしい夜を追い払った。
野はかくも愛らしく微笑む、
春の華やぎの中で。
日陰の木からは穏やかに
小鳥が朝まだき歌を響かせる。
それはまだ半ば夢見心地に
とろけるような甘美なメロディを歌う。

バラの蕾は
オドオドと身を震わせながら頭をあげる。
あの甘美な歌が
奇妙にも震えをもたらしたから。
そして、蕾を覆う葉が
次々と広がり、ヴェールを脱ぎ捨てると、
一粒の涙が
ひそかにそっと浮き出るのだ。


この歌曲は「女声のための6つの歌」として1888年に出版されましたが、これは友人たちの尽力による彼の処女出版でした。
17歳の作曲家の手になるこの作品は、以前にも他の自作と組み合わせてヴォルフ自身が出版社に送っていましたがことごとく失敗していました。
ある時彼は、出版社側の「メンデルスゾーン風」という評に激怒し、父親への手紙の中で「強烈なシューマン調さえある」が「メンデルスゾーン調は断じてない」と書き残しています。
彼の初期作品にはシューマンや時にはブラームスの影響さえ見られますが、この美しい「朝露」については出版社側の「メンデルスゾーン風」という評はあながち見当違いとは言えないように思えます。
とにかく優美で簡潔で、エリック・ヴェルバは「この歌の単純素朴さ、それ自体完結した飾らない調子は正真正銘のヴォルフのものである」と言っていますが、私には後年のヴォルフらしさをこの作品に見出すことが出来ません。
ただ、実に美しく良く出来た作品で、これほど魅力的なわりにあまり知られていないのは、ヴォルフらしさの欠如によるのかもしれません。
詩は「古い歌の本から」とだけ書かれていますが、これはヴォルフの父親の写した詩のノートのことだそうです。
鳥の甘美な歌にバラの蕾が恍惚の涙を流したものが朝露になったという温かいメルヘン(ドイツ語的な意味の「メールヒェン」ではなく、日本語としての「メルヘン」という意味です)の世界が、リートの小世界を堪能させてくれます。
演奏はシュヴァルツコップ&ムーア(EMI:1961年)が気品に満ち、ただ聴き惚れてしまいます。

( 2003.01.06 フランツ・ペーター )


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