Wohl denk’ ich oft Drei Lieder nach Gedichten von Michelangelo |
私はよく思い出す ミケランジェロ歌曲集 |
Wohl denk ich oft an mein vergangnes Leben, Wie es vor meiner Liebe für dich war; Kein Mensch hat damals Acht auf mich gegeben, Ein jeder Tag verloren für mich war; Ich dachte wohl,ganz dem Gesang zu leben, Auch mich zu flüchten aus der Menschen Schar. Genannt in Lob und Tadel bin ich heute, Und,daß ich da bin,wissen alle Leute! |
私はよく思い出す 私があなたを愛するようになる以前の事を あのころ、私を認めてくれるものはだれ一人いなかった 毎日がむなしく過ぎていった 私は考えてみたものだ、いっそ歌手として生きてゆこうかと また、この世間の人々から逃げ出そうかと だが今、私はその世間から賞賛されたり非難されたりしている 今や私の存在を全ての人が知っているのだ! |
陰うつなピアノの序奏からただならぬ雰囲気。次第に高揚し、ついには交響的威容を誇る終結に達する。ヴォルフが発狂する直前、イタリア・ルネッサンスの大芸術家ミケランジェロの詩につけた最後の作品の一つ。詩のなかの「歌手うんぬん」ですが、ミケランジェロは歌もうまかったとかいう話です。
*ホッター(バリトン)&ムーア(ピアノ)(エンジェル)モノラル
*キプニス(バス)&ボス(ピアノ)(ヴォルフ協会)SP>CD(パール)
私が今まで聴いた中で飛びぬけて素晴らしいのが「ドイツリートの朝比奈」(??)ハンス・ホッターの名演。一見無造作に茫洋と歌っているようで、実際そのとおりなのだが(こら!)、慌てず騒がず悠然と進みついには壮大なクライマックスに達する。これに比べると、さしものフィッシャー=ディースカウ大先生や、アダムといった名歌手たちも、なにかいきり立って空回りしているようにきこえる。ところが楽譜を見て見ると、それは譜面に記されたテンポ変動などの指定に忠実なだけ、ということがわかる。ホッターはそれをあえて無視、あるいは非常に控えめにする事で、こざかしくないスケールの大きさを獲得している。まさに朝比奈じゃないですか!(クレンペラーでもいいけど)他には、最近初めて聴いたキプニスが予想以上に良く、気に入りました。
( 1998.08.02 甲斐貴也 )