Klärchens Lied aus Egmont |
エグモントからのクレールヒェンの歌 |
Freudvoll Und leidvoll, Gedankenvoll sein; Langen Und bangen In schwebender Pein; Himmelhoch jauchzend Zum Tode betrübt; Glücklich allein Ist die Seele,die liebt. |
喜びでいっぱい そして悲しみでいっぱい 思いでいっぱいなのです あこがれ そして不安になる 絶え間ない痛みの中で 天高く歓呼し 死ぬほどに心沈む 幸いなるはただ 恋する魂だけなのです |
ゲーテの戯曲「エグモント」第3幕第2場。戻って来ないエグモントを待ちながらクレールヒェンの歌。ベートーヴェンの劇音楽が有名ですが、ゲーテのお気に入りの作曲家だった同時代人のライヒャルトもまたこの詩にはメロディをつけています(1804)。興味深いのは同じ年にもう一人のゲーテのお気に入り作曲家ツェルターもこの詩に曲をつけていたようなのですが、こちらは音源など見つからず、耳にできるまでご紹介は控えようかと思います。ちなみにベートーヴェンの劇音楽は1810年作曲で、いずれもゲーテ存命中のことでした。
このライヒャルトの曲、けっこう軽やかで楽しげな曲で、悲劇的な雰囲気は微塵もなく、あっという間に終わってしまいます。劇的な味わいを求める人には物足りないかも知れませんが、なかなか愛らしくて捨てがたい曲です。ARS-MUSICIレーベルにあるライヒャルト歌曲集Lieder der Liebe und Einsamkeit の中で、Sibylle Kamphues というメゾ歌手が歌っているものが聴けます。他にも「魔王」や「トゥーレの王」、「プロメテウス」や「竪琴弾き」など、シューベルトの歌曲でおなじみのゲーテの詩に付けたライヒャルトの歌曲がたくさん聴けてこれはなかなか面白い聴きものでした。
( 2016.01.02 藤井宏行 )