TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Wir müssen uns trennen   Op.33-8  
  Die schöne Magelone
われらは別れねばならぬ  
     美しきマゲローネ

詩: ティーク (Johann Ludwig Tieck,1773-1853) ドイツ
    Liebesgeschichte der schönen Magelone und des Grafen Peter von Provence 9 Wir müssen uns trennen

曲: ブラームス (Johannes Brahms,1833-1897) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Wir müssen uns trennen,
Geliebtes Saitenspiel,
Zeit ist es,zu rennen
Nach dem fernen,erwünschten Ziel.

Ich ziehe zum Streite,
Zum Raube hinaus,
Und hab' ich die Beute,
Dann flieg' ich nach Haus.

Im rötlichen Glanze
Entflieh' ich mit ihr,
Es schützt uns die Lanze,
Der Stahlharnisch hier.

Kommt,liebe Waffenstücke,
Zum Scherz oft angetan,
Beschirmet jetzt mein Glücke
Auf dieser neuen Bahn!

Ich werfe mich rasch in die Wogen,
Ich grüße den herrlichen Lauf,
Schon mancher ward niedergezogen,
Der tapfere Schwimmer bleibt obenauf.

Ha! Lust zu vergeuden
Das edele Blut!
Zu schützen die Freude,
Mein köstliches Gut!
Nicht Hohn zu erleiden,
Wem fehlt es an Mut?
Senke die Zügel,
Glückliche Nacht!
Spanne die Flügel,
Daß über ferne Hügel
Uns schon der Morgen lacht!

われらは別れねばならぬ
愛しき弦の調べよ
時が来た 走りゆくのだ
はるか遠くの 憧れの目的地へと

私は出かけるのだ 戦いに
戦利品を求めて
そして獲物を勝ち取れば
飛んで帰るだろう 故郷へと

真っ赤な朝焼けの中を
あの人と共に飛び去るのだ
われらを守ってくれよう この槍も
この鉄の鎧も

来たれ 愛しき武器どもよ
戯れに何度も身に着けて来たが
今こそ守れ わが幸福を
この新しい道の上で!

すばやく身を投げ入れよう この大波の中へ
挨拶しよう この激しい流れに
すでに多くの者が底へと呑み込まれているが
この勇敢な泳者は浮かんだままでいようぞ

ああ!喜びなのだ 危険に曝すことこそ
この高貴な血を!
この喜びを守ることこそ
わがかけがえない美質なのだ!
軽蔑を受けずにいられようか
そんな勇気を持たぬ者が?
手綱を緩めよ
幸福な夜よ!
この翼を広げて去れ
あの丘の彼方に
われらにもう 朝がほほ笑んでいる!


第9章 「美しきマゲローネを讃えての馬上試合(Turnier zu Ehren der schönen Magelone)」
マゲローネの父であるナポリ王は娘を別の騎士の嫁にやるつもりでおりました。彼女のために大々的な馬上試合がまた企画され、ヨーロッパじゅうから腕に覚えのある騎士たちが集まってきます。ペーターも居ても立ってもいられずその馬上試合にまた名を伏せて参加し、王が娘の婿にと考えている騎士も含めて再び他の騎士たちをみな打ち破り勝利者の栄冠を得るのでした。そうこうしている間にもペーターはマゲローネと逢瀬を重ね、二人の恋する気持ちはますます高まって行ったのです。
ある日のこと、ペーターはマゲローネの気持ちを試そうと、「そろそろ故郷に帰ろうかと思う」と口にします。「お別れはとても辛いわ」と激しく泣きだすマゲローネ、「君とお別れするなんてできない ここに残る」と言うペーター、しかしマゲローネは思わぬことを口にします。「このままでは私は別の騎士の花嫁にされます。一緒に駆け落ちしましょう」と。
ペーターに異存があるはずはありません。彼はひそかに旅立ちの準備をし、この町の色々なものに別れを告げます。その中にはこれまで彼の恋する思いをずっと一緒に歌にしてきたリュートもありました。彼はリュートをつま弾きながらこの楽器との別れにこんな歌を歌ったのです。

初めはしみじみとリュートに別れを告げる歌も、これからの決意を述べる次の節では力を増し、次の節では一旦憧れを歌うので穏やかになりますが(ここで「朝焼け」と訳したrötlichen Glanze、直訳では「赤い輝き」ですので「夕焼け」と解釈している訳もありましたが、私はやはり夜明け前にマゲローネと駆け落ちするのでしょうからここはやはり朝焼けだと思います)、次の武器を身につけるところから次第にテンポを上げ、これから飛び出す冒険に向けての決意を力強く歌います。「手綱を緩めよ」でまた冒頭と同じメロディが帰って来てしみじみとした雰囲気となりますが、これは二人で逃げた先での幸せな朝を迎えようという気持ちの発露なのですね。最後は吹っ切れたようにこの雰囲気で静かに終わります。

( 2015.12.19 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ