Il m'est cher,Amour,le bandeau Op.106 Le jardin clos |
私には愛おしいのです アモールよ この目隠しが 閉ざされた庭 |
Il m'est cher,Amour,le bandeau Qui me tient les paupières closes ; Il pèse comme un doux fardeau De soleil sur de faibles roses. Si j'avance,l'étrange chose ! Je parais marcher sur les eaux ; Mes pieds trop lourds où je les pose, S'enfoncent comme en des anneaux. Qui donc a délié dans l'ombre Le faix d'or de mes longs cheveux ? Toute ceinte d'étreintes sombres, Je plonge en des vagues de feu. Mes lèvres où mon âme chante, Toute d'extase et de baiser S'ouvrent comme une fleur ardente Au-dessus d'un fleuve embrasé. |
私には愛おしいのです アモールよ この目隠しが 私の目をふさいでしまっている その重さはまるでやさしい重しのようです 太陽が弱々しいバラの上に乗せる もしも私が進むと 奇妙なことに! 私は水の上を歩いているように思えるのです 私の足は重過ぎて そこに置くと 輪のようになって沈んでゆく 誰が一体ほどいたのでしょう この闇の中で 私の長い髪の金の束を? 暗い抱擁にすっかり包まれて 私は火の波の中に飛び込みます 私の唇では 私の魂が歌い エクスタシーとキスに溢れて 燃える花のように開くのです 炎の川の上で |
かなり難解な描写の詩です。レルベルクの原詩には「Fulcite me floribus.(われを花で飾り給え)」という旧約聖書の「雅歌」第2章からの詩句が添えられています。「われはシャロンのバラ、野のユリ」で始まる有名なところです(なおこのフレーズ、多くの邦訳で「干しブドウで私を養い給え」というような文言になっていて、複数の版があるようです)。まあそれはさておいてもこの「雅歌」、お読みになると「えっ これが聖書なの!」とびっくりされるくらい艶めかしい恋の歌です。
それを受けてこのレルベルクの詩を見ると、この難解な描写の裏に愛の弾けるような喜びがあることをお感じになられませんでしょうか。フォーレの音楽も彼にしては熱い(かなり控え目ではありますが)恋の喜びを歌い込んでいます。
( 2015.12.14 藤井宏行 )