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海道回顧    
  海道東征
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
    新頌 (1941)  海道回顧

曲: 信時潔 (Nobutoki Kiyoshi,1887-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


その一

かがなべて、()(よる)を、海原(うなばら)(わた)り、
かがなべて、()(とし)を、(みや)(うつ)らしき。
  ああはれ、その幾歳(いくとせ)
  ああはれ、その()()き。

(とし)ごとに、御伴船(みともぶね)、いや(かず)()えぬ、
つぎつぎに、御従(みつき)びと、またいや()しぬ。
  ああはれ、また春秋(はるあき)
  ああはれ、そが海山(うみやま)


その二

(つき)()や、足一騰宮(あしひとつあがりのみや)
一年(ひととせ)や、筑紫(つくし)崗田(をかだ)(みや)

多祁理(たけり)とも、阿岐(あき)()(みや)
たづたづや、七年(ななとせ)や。あはれ。

吉備(きび)にして、また八年(やとせ)高嶋(たかしま)(みや)
大和(やまと)はも(とほ)しとよ、高千穂(たかちほ)(はる)けしと。


その三

かがなべて、()(よる)を、海原(うなばら)(わた)り、
かがなべて、()(とし)を、(みや)(うつ)らしき。
  ああはれ、その幾歳(いくとせ)
  ああはれ、その()()き。

()()つや、み(たくはへ)()やかく()りぬ、
(あめ)(した)ことむけむ、(とき)(いま)()りぬ。
  ああはれ、えしや、
  ああはれ、(いま)(とき)や。



第5章のような調子で進めて行きますと大和に着くまでに大変な演奏時間がかかりますので、この章では船の旅路をダイジェストで紹介しています。
テナーのソロでゆったりと始まる「その一」、メゾと合唱が続いて入ってきて長い旅路をしみじみと歌い、そのまま切れ目なく「その二」に入ります。
福岡県北九州市にあった筑紫の崗田宮、阿岐国の多祁理宮(埃の宮)は安芸の国広島の、そして吉備高嶋の宮は岡山と瀬戸内海を縦断して関西方面へと次第に近づいて行っています。伝承ではけっこう長い年月をかけて進んで行っておりますが、これは各地を平定したり懐柔したりして時間をかけて移動したことの表れでしょうか。そのあたりの歳月の長さが「その三」で歌われていますが、ここでは天下平定の栄光がそれまでのゆったりとした日本情緒から一転して壮麗な合唱によって讃えられ、曲を閉じます。

( 2015.11.26 藤井宏行 )


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