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アンデルセンの姿画    
 
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
      アンデルセンの姿画

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


月かげの言葉うつすと、
君こそは ほのかなりけめ。
 ハンス・クリスチヤン・アンデルセン。
広びたひ、巻髪のひと、
広びたひ、巻髪のひと。

靴つくり、まづしき家に、
君こそは 童なりしか。
 ハンス・クリスチヤン・アンデルセン。
夢見がち、細き眉引、
       細き眉引。

いくかへり、春やオデンセ、
君こそは デンマルクびと。
 ハンス・クリスチヤン・アンデルセン。
麦のはな、四つ葉クローバ、
       四つ葉クローバ。

鸛(こふのとり)、あくがれの鳥、
君こそは よき愁ひ鳥。
 ハンス・クリスチヤン・アンデルセン。
日と雪と、海の上の笛、
      海の上の笛。

神はあり、童ごころに、
君こそは たましひを見き。
 ハンス・クリスチヤン・アンデルセン。
知慧を見き、かがやきを見き、
        かがやきを見き。

幻と現の寵児(まなご)、
君こそは童の父よ。
 ハンス・クリスチヤン・アンデルセン。
眼のわかき、頤(あご)ひげのひと、
        頤ひげのひと。



1925年9月、アンデルセンの没後50年を記念する講演・音楽会・展覧会が東京で開かれました。白秋と耕筰もこの企画の実行委員であったこともあり、このコンビで歌を作りました。これがこの行事で歌われたのかどうかは定かではありませんが、たいへんに興味深い作品が生まれました。8分の6拍子のゆったりとした調べで作家アンデルセンその人の容貌を淡々と歌って行きます。内容的には詩も曲も大人向きという感じですので童謡集には収められず、詩については1933年に刊行された白秋全集に収録されるまで出版はされなかったようです。楽譜には第一節の歌詞しか記載されておりませんでしたので、そこしか歌われなかったのかも知れませんがこの全集の歌詞をもとに残りも記しておきました。従って1番のみ歌われる形の歌詞で、残りは全集のテキストですので最後の行の繰り返しが違っております。

( 2015.10.17 藤井宏行 )


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