白月 |
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照る月の 影みちて かりがねの さおも見えずよ わが思う はても知らずよ ただ白し 秋の月夜は 吹く風の 音さえて 秋草の 虫がすだくぞ 何やらん 心も泣くぞ 泣きあかせ 秋の月夜は |
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大正10年(1921)の作品。「はくげつ」と読むのが普通のようですが「しろつき」と呼ばれることもあります。童謡作曲家として知られた本居の本格的な歌曲の中では最もよく知られ、歌われる曲でしょう。息の長い情緒纏綿たる日本的メロディが感動的です。冴えわたる秋の名月が美しくあたりを照らす夜の情景を味わい深く描き出します。言葉が少々古くなって意味が伝わりにくくなってしまっているのが大きなハンデですが、ずっと歌い継がれて行ってくれれば良いなと思う名曲のひとつです。
( 2015.09.27 藤井宏行 )