Das verlassene Mägdlein Gedichte von Eduard Mörike für eine Singstimme und Klavier |
捨てられた女中さん メーリケ歌曲集 |
Früh,wann die Hähne krähn, Eh' die Sternlein verschwinden, Muß ich am Herde stehn, Muß Feuer zünden. Schön ist der Flammen Schein, Es springen die Funken; Ich schaue so drein, In Leid versunken. Plötzlich,da kommt es mir, Treuloser Knabe, Daß ich die Nacht von dir Geträumet habe. Träne auf Träne dann Stürzet hernieder; So kommt der Tag heran - O ging’ er wieder! |
朝早く雄鶏の鳴く時 まだ星も消えないうちに わたしはかまどに行って 火をつけなければいけないの 燃える炎の輝きと はねる火花が綺麗だわ わたしはそれに見入り ひとり憂いに沈む ふとわたしは思い出す 不実な若者の姿を 昨夜わたしは あなたの夢を見たわ 次から次へと 涙がしたたり落ちてゆく こうして新しい一日がやって来る・・・ ああ、早くまた暮れればいいのに! |
メーリケの詩の中でも古くから人気の高い作品で、ドイツでは民謡として歌われており、作曲はなんと有名無名合わせて50種類以上に及ぶといいます。ヴォルフの歌曲Ma:gdleinでは第二連の炎の描写と第三連の心の乱れが印象的です。ヴォルフ以外の有名な作曲家ではプフィッツナー、フランツのものがあり、大指揮者として有名なワインガルトナーの作品もあるそうです。
このタイトル、既訳では「棄てられし下女」「棄てられた女中」「棄てられた娘」「捨てられた乙女」などがありますが、詩の内容と、民謡として歌われていることを考えると「乙女/娘」より「女中」が合ってるように思います。Ma:gdleinは直訳すれば「女中ちゃん」のような語で、年若い女中という意味です。ここでは民謡風にと考えて「女中さん」にしてみましたがいかがでしょうか。
原詩は民謡調の四行詩できれいに韻を踏んでいます。日本語の訳詩では四行詩の形を再現するのがせいぜいですが、正確な発音と美しい声による歌曲の演奏で原詩の美しさを楽しめるのは幸いです。録音は古今数多くあり、デビュー当時のボニーのかわいらしい歌唱も捨て難いですが、この種の悲しい曲はなんと言っても白井さんの独壇場でしょう。
( 2003.8.24 甲斐貴也 )