Akanthos |
アカントス_声とアンサンブルのための |
歌詞はありません
|
|
先日生涯を閉じたギリシャの前衛作曲家クセナキスですが、私の手持ちのライブラリを見てみたら結構面白い声楽曲(と言っても良いのだろうか?)があったので追悼の意味もこめてご紹介しようと思います。
WERGOレーベルにある1970年代後半の室内アンサンブル作品(Palimpsest・Epei・Dikhthas・Akanthos)をグイ・プロセロー指揮のアンサンブル、スペクトラムで録音した演奏を聴くと、初期のストラビンスキーやバルトークも真っ青の叩き付けるような原始のリズムにめくるめく色彩感で、とても数学と音楽を結び付けて論理的に音楽を書いた(ことにされている)人の作品とは思えません。尤も、数学というのも科学というよりは一種の美学のようなところもありますから(美しいフォームを大事にする)、彼の中では首尾一貫していたのかも知れません。
で、このAkanthosですが、大理石の柱を葉で飾る植物の名前なのだそうです。冒頭の弦の激しいグリッサンドと叩き付けるピアノに対し、ソプラノ(Walmsley-Clark)は「あ-、あー、あー」という平坦なヴォカリーズで対抗します。ソプラノといっても地声で歌っているので、激しい伴奏のリズミカルな音と緊張関係を醸し出し、不思議な響きです。
更に、木管と声をユニゾンで重ねてみたり、「あへへあ-あー」とか特殊な声を出させて(間寛平ではない)いろいろ新しい音を生み出しているので、聴いていて全然飽きない面白い作りの音楽です。
最近歳のせいか、この手の音楽とは長らくご無沙汰でしたので、とても新鮮な体験でした。クセナキスの音楽は21世紀に残るのでしょうか? 改めてまとめて聴いてみると、結構価値のある作品をたくさん残しているように感じたのですが...
( 2001.02.20 藤井宏行 )