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松島音頭    
 
 
    

詩: 北原白秋 (Kitahara Hakusyuu,1885-1942) 日本
      松島音頭

曲: 山田耕筰 (Yamada Kousaku,1886-1965) 日本   歌詞言語: 日本語


ハアー
松は松しま 磯馴の松の
松のねかたに 桔梗が咲いた

見たよ見ました
一もと桔梗
や ほうれ ほうい
舟ばたたたいて
や ほうれ ほうい

さんささんさは
ありゃ松かぜよ
誰をまつやら 桔梗が咲いた

見たよ見ました
一もと桔梗
や ほうれ ほうい
舟ばたたたいて
や ほうれ ほうい

ここは松しま 雄嶋が崎よ
星のちろりに 桔梗が咲いた

見たよ見ました
一もと桔梗
や ほうれ ほうい
舟ばたたたいて
や ほうれ ほうい

さんささんさで
待つ身はさぞや
露の夜露に 桔梗が咲いた

見たよ見ました
一もと桔梗
や ほうれ ほうい
舟ばたたたいて
や ほうれ ほうい

はやせはやせや 松島音頭
松のねかたに 桔梗が咲いた

見たよ見ました
一もと桔梗
や ほうれ ほうい
舟ばたたたいて
や ほうれ ほうい



北原白秋といえば、山田耕筰とのコンビで日本歌曲幾多の名曲を生み出した人であるといっても誰も異論はないところでしょう。遠い懐かしさを覚える「この道」や「からたちの花」、ユーモアと歯切れのよさが心地よい「あわて床屋」や「待ちぼうけ」に「かやの木山」、あるいは白昼夢のような幻想の中に壮絶な内容を歌う「曼珠沙華(ひがんばな)」など、代表的な名曲をまずは取り上げるべきなのかも知れませんが、異色作品大好きの私としてはこの「松島音頭」に最初の食指が動いてしまいました。

この曲、「音頭」と付いていますからお分かりのようにばりばりの日本民謡です。(中山晋平などがよく手がけた新民謡というジャンルらしい)ですが、さすがクラシック畑の作曲家の手になる作品だけに、民謡歌手が喉を潰して鍛えた本来の日本的発声で歌うよりも、オペラ歌手がイタリア風ベルカント唱法で朗々と歌う方がしっくり来てしまうという非常に奇妙な曲なのです。
更に凄いのはピアノ伴奏で、太鼓や鐘のリズムを模した血のたぎるような祭囃子が、まさに日本のバーバリズムを呼び覚ますこと請け合いです。こんな面白い曲が、なんと初演では日本舞踊の伴奏としてソプラノ歌手・三浦環によって歌われたとは。あまりの凄さに言葉もありません。
この歌で日本舞踊を踊る光景、一度見てみたいものです。

という訳で(どういう訳だ?)、声とのミスマッチ感が大変心地よい鮫島有美子さんの録音をここでは挙げてみましょう。
(DENON)
なりふり構わぬ絶唱の(編曲も凄い)五木の子守歌ほど凝ってはいませんが、ストレートな声の爆発がたまりません。それにも増して伴奏のヘルムート・ドイチュ氏の熱演。こんなに激しい日本情緒を日本人以外の人がピアノで表現したのを聴いたのは、ロシア出身の往年の技巧派ピアニスト、シュラ・チェルカスキーが”Otemoyan”を弾いた録音(NIMBUS)以来です。
彼女の日本歌曲は、凝り過ぎた編曲がどうも好きになれないことが多いのですが、夫君ドイチュ氏との共演したものには素晴らしく味のあるものが多く見逃せません。
営業的にはポップな曲を凝った編曲で録音した方が売れるのもわかるのですけれど、この曲のようなピアノ伴奏の曲の出来栄えが素晴らしいだけに残念です。

( 2000.01.09 藤井宏行 )


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