しぐれに寄する抒情 |
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しぐれ しぐれ もしあの里をとほるなら つげておくれ あのひとに わたしは 今夜もねむらないでゐた・・・ と あのひとに つげておくれ しぐれ |
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團伊玖麿の濃密な曲、大中恩のみずみずしい曲とならんで、佐藤春夫のこの詩につけた歌としてはもっとも良く歌われるものでしょう(他のいろいろな人も作曲はしていますが)。
飄々とした日本情緒あふれるピアノ伴奏に続いて優しい恋のつぶやきがこれも日本情緒たっぷりに歌われます。ちょっとシャンソンっぽい雰囲気が顔を出すところもお洒落。とても味わい深い歌だと思います。
面白いのはこの作曲家三人、いずれも日本語のイントネーションをとても大事にする人だからでしょう。三曲が三曲とも言葉にぴったりと寄り添った結果、メロディがみなそっくりになってしまいました。ただその中でもそれぞれの個性を紡ぎ出しているのはお見事といえましょう。
( 2015.01.17 藤井宏行 )