L'esule |
流刑者 |
Vedi! la bianca luna Splende sui colli; La notturna brezza Scorre leggera ad increspare il vago Grembo del queto lago. Perché,perché sol io Nell'ora più tranquilla e più soave Muto e pensoso mi starò? Qui tutto è gioia; il ciel,la terra Di natura sorridono all'incanto. L'esule solo è condannato al pianto. Ed io pure fra l'aure native Palpitava d'ignoto piacer. Oh,del tempo felice ancor vive La memoria nel caldo pensier. Corsi lande,deserti,foreste, Vidi luoghi olezzanti di fior; M'aggirai fra le danze e le feste, Ma compagno ebbi sempre il dolor. Or che mi resta?... togliere alla vita Quella forza che misero mi fa. Deh,vieni,vieni,o morte,a chi t'invita E l'alma ai primi gaudi tornera. Oh,che allor le patrie sponde Non saranno a me vietate; Fra quell'aure,su quell'onde Nudo spirto volerò; Bacerò le guance amate Della cara genitrice Ed il pianto all'infelice Non veduto tergerò. |
見よ、白い月は 丘の上に輝き、 夜のそよ風は 軽やかにそよぎ 穏やかな波を立てる 静かな湖の水面に なぜ、なぜ私は独りなのか? この静かで、穏やかな時に ただ黙って物思いに耽るのか... 周りは喜びに満ちている、空も大地も 自然の美しさに微笑みかけているのに、 ひとり流刑者だけは涙にくれている ふるさとの風を受けて ひそやかな喜びに震えた おお 幸せな時はまだ息づいている 暖かい想いの記憶の中に 荒れ地を、砂漠を、森を旅し、 花に溢れた土地も見た 祭の踊りの喧燥の中も歩いた。 悲しみだけが私の道連れだったけれど 私に今何が残っているだろう?-人生すべてを奪い去った 私を破滅させたあの力。 ああ、来るがよい。来るがよい、死よ、お前を呼び寄せる者のところに。 そうすれば魂は昔の幸せを取り戻せるのだ おお、祖国の岸辺が 私を再び受け入れた時 波の上を渡るそよ風の中で、 我が裸の魂は舞い上がるのだ 私は頬にくちづけしよう 愛しい母のその頬に そしてそこに伝わる涙を 乾かすことができるのだ! |
1839年作曲のヴェルディ若き日の作品です。 (最初のオペラ「オベルト」と同時期の作)
正確には歌曲というよりはコンサートアリアといった趣の作品なのですが、出来の悪いオペラの退屈なアリアよりは数段魅力的で、ヴェルディ初期作品の旋律美を堪能できる傑作だと思います。
リサイタルなどでももっと取り上げれば良いのにと思うのですが、ヴェルディにしてもプッチーニにしても、オペラのアリア程には歌曲は演奏されないですね。実に勿体無い。
この曲にこだわるのは、ヴェルディ初期作品の中で私の大好きなオペラ「イル・トロヴァトーレ」を思わせるムードに溢れていることです。冒頭の今の身の上を嘆くところは、オペラでルーナ伯爵が満たされない恋を嘆くところを思わせますし、最後に祖国に帰る希望を歌うところなどは、あの有名なマンリーコの「見よ、恐ろしき火を」ばりの盛上がりで終わります。8分以上を要する曲ですが、ひとつの曲で小オペラをなしているといった感もありとてもお得です。もっともそれが歌うには難しいのであまり歌われないのかも知れません。
私の手元にあるヴェルディ歌曲集は2種類、Collinsのイタリア歌曲シリーズ第3集でデニス・オニールのテナーが歌うやつと、Nuova-Era のレナータ・スコット&パオロ・ワシントンのコンビでのライブ録音でワシントンのバスで聴けるやつがあります。この2つではやはり前者、テノールの絶唱に軍配が上がります。このオニールという歌手、どちらかというとリリックに近い声なので、ドミンゴやコレルリのテノールのような烈唱で最後を盛り上げるまでには至りませんが、やはりこの曲の最後は高い声の限界を極めるととても映える曲のように感じます。そこは彼も精一杯の緊張感で曲を盛り上げてくれていて、聴いていても気持ち良いです。
( 2000.2.13 藤井宏行 )