月の光に与へて |
|
おまへが 明るく てらしすぎた 水のやうな空に 僕の深い淵が 誘はれたとしても ながめたこの眼に 罪は あるのだ 信じてゐたひとから かへされた あの つめたい くらい 言葉なら 古い泉の せせらぎをきくやうに 僕が きいてゐよう やがて夜は明け おまへは消えるだらう あした すべてを わすれるだらう |
|
立原道造の詩はやはり誰でもメロディがつけられるというものでもなく、今年生誕100周年に色々物色してみましたがなかなかこれは、と感じ入って取り上げられるものが多くありません。溝上日出夫はごく初期にこの立原の詩による歌曲を書いただけのようですが、言葉の扱いといいメロディの抒情性といい、この詩人との相性は抜群です。立原の詩にしてはちょっと暗めのものでしたので、もっと爽やかな詩にも歌をつけてくれていたらと思うと残念でなりません。
もっとも、そういう詩に共感を持って曲をつけられるのは若い頃だけなのかも知れませんね。
さて、この詩、底知れないほどつらい失恋の歌ですね。ぷつり ぷつりと途切れる間合いが実に心に響くいい歌です。以前ご紹介した大手拓次の詩につけた歌を収録したCDに、同じ田口興輔氏の歌で収録されています。
( 2014.11.14 藤井宏行 )