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ゆふかげ草    
 
 
    

詩: 野口雨情 (Noguchi Ujyou,1882-1945) 日本
      

曲: 下總皖一 (Shimofusa Kanichi,1898-1962) 日本   歌詞言語: 日本語


ゆふかげ草の 咲く濱に
海の上から 月が出る

ゆふかげ草に ゆふぐれの
露は次第に しげくなる

ゆふかげ草の 花さへも
ゆふべの露の 中に咲く



野口雨情の詩につけた歌曲というと、中山晋平のものが主に思い浮かぶもので、日本民謡風の情緒が真っ先に連想されてしまうのは仕方ないところでしょう。そんな先入観を持って、小川明子さんの歌う雨情の詩、下總 皖一の手になる歌曲「ゆふかげ草」を聴いて度肝を抜かれました。雨情の詩でこんな斬新な歌曲を書く人がいたとは! 童謡「たなばたさま」のイメージが強いですが、彼は東京音楽学校を首席で卒業ののちドイツ留学してあのヒンデミットに師事していたこともあるのだそうですから、けっしてあってはおかしくない作品ではあるのですが。
この曲を収録している小川明子さんのCD(早春賦 日本歌曲選集2)で、ピアノ伴奏を務められている山田啓明さんが書かれたライナーで「非常に珍しい下總 皖一の歌曲は以前、お茶の水にあるディスクユニオンで購入した「下總皖一作品選集声楽編」(音楽の友社 昭和55年)に収められていたもの (中略) 野口雨情の詩による「ゆふかげ草」も、他の作曲家の素直でのびのびとしたメロディーと比較すると(中略)アカデミックな理論家としての片鱗がうかがえて興味深い。「現代音楽」の香り漂う独特の響きの世界を皆様是非お楽しみ下さい」とありました。Youtubeでも同じコンビでの演奏が取り上げられておりますので是非ご覧になられて、そしてもし気に入られたらCDも購入されてはと思います。まだ詩人の著作権が切れていないので残念ながらご紹介は諦めるのですが、同じ下總の「白蓮の短歌による歌曲」もとても興味深いものです。

( 2014.11.02 藤井宏行 )


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