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	或る風に寄せて(暁と夕の詩より)		 				  三つの抒情  | 									
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おまへのことでいつぱいだつた 西風よ たるんだ唄のうたひやまない 雨の昼に とざした窗(まど)のうすあかりに さびしい思ひを噛みながら おぼえてゐた おののきも 顫(ふる)へも あれは見知らないものたちだ…… 夕ぐれごとに かがやいた方から吹いて来て あれはもう たたまれて 心にかかつてゐる おまへのうたつた とほい調べだ―― 誰がそれを引き出すのだらう 誰が それを忘れるのだらう……さうして 夕ぐれが夜に変るたび 雲は死に そそがれて来るうすやみのなかに おまへは 西風よ みんななくしてしまつた と  | 																
    																
																
																
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歌のサブタイトルにもあります通り詩集「暁と夕の詩」より。その冒頭に置かれた詩です。いかにも立原らしいロマンティックな恋の歌。この曲を含む「三つの抒情」は三善のほとんど初めての合唱作品(1962)なのだそうですが、今でもたいへん良く取り上げられています。
雄弁なピアノの長い序奏に続いて豊かな女声の響きがピアノのきらめく纏わりつきに答える美しさは格別。最後の情熱の盛り上がりも見事です。	
( 2014.10.31 藤井宏行 )