かもめ |
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かもめかもめ 去りゆくかもめ かくもさみしくくちずさみ 渚はてなくつたひゆく かもめかもめ 入日のかたにぬれそぼち ぴよろとなくはかもめどり あわれみやこをのがれきて 海のなぎさをつたひゆく |
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弘田による犀星の詩につけた歌曲は「霜」を取り上げました。あれほどの斬新さはなく、冒頭の朗々たるメロディなどうっとりと聞き惚れてしまうような美しさにもあふれていますが、美しい海の夕暮れの情景の中で詩人の寂しさを描き出すため、微妙な転調を繰り返して明るさの中にほのかな翳りを織りこんでいます。童謡のときは見せない弘田の腕を味わうのもまた一興でしょう。
詩はこれも犀星の「抒情小曲集」から。畑中良輔が曲をつけた 「海浜独唱」と並んで詩集では置かれています。同じ時に詠んだものなのでしょう。情景もそして詩人の心情にも響き合うものが感じられます。
( 2014.10.25 藤井宏行 )