たらいから |
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たらいからたらいにうつるチンプンカン |
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小林一茶の辞世の句といわれているものですが、実際は後世の作で一茶のものではないのではと最近は言われるようになりました。
しかしシンプルな中にしみじみと深いユーモアを漂わせているのはなかなか素晴らしいです。
蛇足ながら解説しておくと、産湯のたらいで現れてから、最後は湯潅で自らの亡骸を洗ってもらう、その間の人生のなんと訳のわからんことよ、といった意味になるでしょうか。
小山のつけた曲はその辞世にふさわしく、ゆったりと鐘のように打たれるピアノの連打とかけあいながら詠唱のようにつぶやく歌がしんみりとしています。
楽譜の最初に「気息奄々として」と書かれているのがほのかにおかしみを誘いますがたいへんに真面目な歌です。「ちんぷんかん」も厳粛につぶやかれております。
( 2014.10.16 藤井宏行 )