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TO TRENO FEVGI STIS OKTO    
 
汽車は八時に出る  
    

詩: エレフセリウ (Manos Eleftheriou,1938-) ギリシャ
      

曲: テオドラキス (Mikis Theodorakis,1925-) ギリシャ   歌詞言語: ギリシャ語


詩:著作権のため掲載できません。ご了承ください
汽車は八時に出る
カテリーニに向かう汽車は。
11月は別れの時だから
あなたもきっと忘れられないでしょう
・・・
あなたは今カテリーニで兵役についている
朝霧の中、5時から8時まで
心の中のナイフを砥ぎ澄まし
朝霧の中、見張りの役を続けてる
   (歌詞は大意です)

ギリシャの国民的大作曲家テオドラキスは、「その男ゾルバ」や「セルピコ」などに代表されるたくさんの映画音楽や、流行歌まで書いてしまうその幅広さが、日本でいうと武満徹を思わせるような人ではないかと私などは思います。
その彼の書いた流行歌中の流行歌がこの「汽車は八時に出る」。 シャンソンやロック歌手のカヴァーをたくさん生んでいる名曲です。
雰囲気は日本でいうと60〜70年代の歌謡曲、私が連想したのは「別れの朝」(ペドロ&カプリシャス)のクラーい情景です。
この歌の詩も兵隊に取られた恋人との悲しい別れを歌っていますが、第二次大戦後のギリシャの内乱や軍事独裁政権下での弾圧 (テオドラキス自身も投獄されたりしています)のもとでの若者たちの哀しみを見事に表現しているのが心を打つのでしょうか。

1985年に録音されたギリシャ出身のメゾ歌手アグネス・バルツァの「わが故郷ギリシャの歌」(DG)にも収録され、その圧倒的な存在感で聴かせてくれますが、このCDを聴いた作家の五木寛之氏が自身で日本語歌詞まで作ってしまうほど影響を受けたといいます。
で、この五木氏の詩になる「汽車は八時に出る」は、哀感溢れるポルトガルのポップスであるファドの歌手・月田秀子さんの録音、そしてあの森進一さんの録音まであるという瓢箪から駒の面白さ、よもやアグネス・バルツァと森進一が同じ曲で競演しているものがこの世の中にあるとは思わなかっただけにビックリです。
確かに森進一の絶妙の節回しで聴くと、オリジナルも日本の歌謡曲なのではないかというくらいのハマリかたで迫ってきます。

JVCmusicのサイト、森進一のアルバムで「こころの雫〜平成和讃」を検索して頂くとその1曲目がこの曲です。
ここで冒頭部分が試聴できますのでご興味のおありの方はどうぞ。
エーゲ海の明るいイメージや、アルカイックな美しさだけで語られる感のあるギリシャですが、近・現代はバルカン半島の混乱に翻弄された歴史を持ち、人々はこんな悲しい歌を愛したのですね。
今でも近隣のキプロスやマケドニアでは平和とは言い難い状況が続いているようです。早くこんな歌が現実の苦しみを癒す歌でなくて、苦い思い出を噛みしめる歌となるような時代がくるといいですね。

( 2004.08.10 藤井宏行 )


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