はたらいた人達 5つの現代詩 |
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あのころ強盗も 追剥も どんなに晩くとも町にはゐなかつた あなたがたはよくはたらいた 工場へ野菜作りへ そのあなたがたのいまはどうです くちべにをつけて踊り 朝でも晝でも踊る しかしむかしのあなたがたは よくはたらいた へんな格好が美しい限りだつた あああなたがたはよくはたらいた これだけで僕は何も言ふまい |
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抒情歌や童謡に見事な作曲の腕の冴えを見せる大中恩が1958年に書いた歌曲集「5つの現代詩」はたいへん意欲的な歌曲集です。
詩の選択も木原孝一、中原中也、深尾須磨子にこの室生犀星を2篇、そして犀星も初期の抒情的な詩ではなくてけっこう癖の強い後期作品を選んでいます
(この「はたらいた人達」は未刊の昭和24年の詩なのだそうです)
この曲も、語りをベースとしながら時折見せるダンスのリズムとメロディが奇妙な対照を見せてとても面白い作品。この「5つの現代詩」を彼の代表作と評する人がいるのも頷ける絶妙さです。
( 2014.10.11 藤井宏行 )