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Net,ne tebja tak pylko ja ljublju    
 
違う 君じゃないんだ ぼくが燃えるように愛してるのは  
    

詩: レールモントフ (Mikhail Yur'yevich Lermontov,1814-1841) ロシア
      Нет,не тебя так пылко я люблю (1841)

曲: シーシキン (Alexey Shishkin,19世紀-) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Net,ne tebja tak pylko ja ljublju,
Ne dlja menja krasy tvoej blistan’e;
Ljublju v tebe ja proshloe stradan’e
I molodost’ pogibshuju moju.

Kogda poroj ja na tebja smotrju,
V tvoi glaza vnikaja dolgim vzorom,
Tainstvennym ja zanjat razgovorom,
No ne s toboj ja serdtsem govorju.

Ja govorju s podrugoj junykh dnej,
V tvoikh chertakh ishchu cherty drugie,
V ustakh zhivykh usta davno nemye,
V glazakh ogon’ ugasnuvshikh ochej.

違う 君じゃないんだ ぼくが燃えるように愛してるのは
ぼくのためじゃない 君の輝く美しさも
ぼくが愛したのは 君の中にある苦悩さ
そして死んでしまったぼくの青春だ

そして時には ぼくは君を見つめた
君の瞳に じっと視線を貫き通す
意味ありげに ぼくが会話を続けていても
君とじゃないんだ ぼくが心で語っているのは

ぼくが話してるのは 若い日々の女友達
君の顔の中に 別の面影を求めてるんだ
生き生きとした唇の代わりに ずっと昔に沈黙した唇を
燃え立つ瞳の中に もう光を失った瞳を


この作曲家の名前は相当ディープなロシア音楽ファンでもご存じないでしょうか。しかしレールモントフのこの詩には80人以上の作曲家がメロディをつけているのだそうですが、ロシアの人にとってはこのシーシキンの書いたメロディが一番なじみ深いものとなっているようです。いや、もしかするとすべてのレールモントフの詩に付けられた音楽の中でも一番良く知られた曲かも知れません。Youtubeで検索してもものすごい数の歌唱が引っ掛かってきました。中にはオブラスツォワやホロストフスキーなどのクラシック系の歌手が歌ったものも混じっておりましたが、基本はこれはロシアの流行歌系(日本でいう演歌歌手のような人)の人のレパートリーのようです。バラライカなどの伴奏で朗々と明るく耳に優しいメロディが流れてくるのはなかなか素晴らしく、ロシアの懐メロの代表作のひとつと呼んでも過言ではないかと思います。男女共よく歌われていますがやはりこれは堂々たるバス・バリトン歌手で聴きたいところ、Youtubeでも選り取り見取りですのでお好きなものを探して見られてはいかがでしょうか。演奏スタイル、テンポから何から多彩なので聴き比べも楽しいです。作曲者のシーシキンは1920年代にブレイクした楽団のリーダーだった人のようですが、色々調べてみたものの結局生没年は分かりませんでした。
レールモントフの詩は彼が悲劇的な詩を迎える直前に書かれたもののようで、6歳下の彼の遠縁の女性に宛てたものではないか、とロシアのWikiには記載がありました。恋歌のように見せかけながら実は深い虚無感を歌っているようなこの詩、シーシキンのように屈託のないメロディをつけてはいけないような気もしますがそれでもこの歌は魅力的です。

( 2014.09.23 藤井宏行 )


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