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Tuchki nebesnye    
 
空の雲よ  
    

詩: レールモントフ (Mikhail Yur'yevich Lermontov,1814-1841) ロシア
      Тучи (1840)

曲: ダルゴムイシスキー (Alexander Sergeyevich Dargomyzhsky,1813-1869) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Tuchki nebesnye, vechnye stranniki!
Step’ju lazurnoju, tsep’ju zhemchuzhnoju
Mchites’ vy, budto kak ja zhe, izgnanniki
S milogo severa v storonu juzhnuju.

Kto zhe vas gonit: sud’by li reshenie?
Zavist’ li tajnaja? zloba l’ otkrytaja?
Ili na vas tjagotit prestuplenie?
Ili druzej kleveta jadovitaja?

Net, vam naskuchili nivy besplodnye...
Chuzhdy vam strasti i chuzhdy stradanija;
Vechno kholodnye, vechno svobodnye,
Net u vas rodiny, net vam izgnanija.

空の雲よ 永遠の放浪者たちよ!
真っ青な草原を 真珠の連なりで
お前は駆けて行く 私のように追われて
懐かしい北の国から 南の方を目指して

誰がお前を追っているのだ 運命の求めなのか
ひそやかな嫉妬か?あからさまな敵意なのか?
それともお前の負う罪の重さのためか?
毒を含んだ友人たちの中傷のせいなのか?

いや お前たちは実りなき大地にうんざりしているのだ
お前には情熱など無縁 苦しみを知ることもない
永遠に冷たく 永遠に自由なのだ
お前たちには故郷がなく 追放されることもないのだ


1840年、詩人がペテルスブルクを追放されてカフカスへと向かう道すがらに書かれた詩なのだそうで、雄大なロシアの大平原の風景と、詩人のやるせない思いの激しい訴えとが絶妙の対象を見せて心に残る詩です。ダルゴムイシスキーのつけた曲は典型的なロシアのロマンスといった雰囲気。控え目に響くピアノ伴奏に乗って、朗々とした悲しいメロディがゆったりと歌われて行きます。最後の節だけはちょっとテンポが上がってリズミカルになり曲を盛り上げますが、ベースに流れる哀調はそのままです。詩の分量は多くありませんが、演奏には5分ほどかかる大曲となりました。
この曲にはソプラノのヴィシネフスカヤが夫ロストロポーヴィチのピアノ伴奏のサポートを得て歌った見事な録音(Erato)があります。レールモントフの失意を代弁するかのような情感深い歌です。

( 2014.09.16 藤井宏行 )


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