TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ


Ninna nanna    
 
おやすみ、坊や  
    

詩: ダンヌンツィオ (Gabriele d'Annunzio,1863-1938) イタリア
      Ninna nanna

曲: トスティ (Francesco Paolo Tosti,1846-1916) イタリア   歌詞言語: イタリア語


Ninna nanna,mio figliuolo!
Ninna nanna,occhi ridenti!
Canta,canta,rusignolo,
che il mio bimbo s'addormenti!
Fresche rose,gigli aulenti
ne la culle è il mio figliuolo.

Ninna nanna! Le lenzuola
son tessute di contento.
Oro fino era la spola
ed i licci erano argento;
e pareva un istrumento
quel telajo,una viola!

“Chi ci dorme,non si duole.”
E seguiva dolcemente
quel telajo le parole.
“Questa è tela assai piacente.
Chi ci dorme,non si pente.”
Ninna nanna,occhi di sole!

Ninna nanna! O rusignoli,
tutti qua,perch'ei vi senta!
Lascian tutti i nidi soli,
vengon tutti. Ch'ei li senta!
Il mio bimbo s'addormenta
sotti i canti,sotto i voli.

Benedetto! Non c'è duolo
pel mio bimbo,non tormento.
Ninna nanna! Il suo lenzuolo
è tessuto di contento.
Ninna nanna! Il lume è spento,
ma riluce il mio figliuolo.

ニンナ・ナンナ 私の坊や!
ニンナ・ナンナ かわいい瞳!
歌え、歌え、ナイチンゲールよ
私の坊やが眠れるように!
華やかなバラと香しいユリに囲まれ
私の坊やは揺りかごの中

ニンナ・ナンナ ベッドのシーツは
幸せで織られているの
金の横糸と
銀の縦糸で
まるで楽器のように見える
機織り機はヴィオラみたい

「ここで寝る子は さびしくないよ」
やさしく流れてくるのは
機織り機の言葉
「これは幸せのシーツだから
これで眠る子は悲しまないよ」って
だからお休み、お日様のような瞳

ニンナ・ナンナ、おお、ナイチンゲールたちよ
みんなでここへ来て、坊やに歌を聞かせてね
みんなで巣を飛び立って
みんなでここへ来て、坊やに聞かせてね
そうしたら坊やは眠るでしょう
あなたたちの歌声の下で、飛翔の下で

幸せな坊や!悩みなどないし
私の赤ちゃんには苦しみもない
ニンナ・ナンナ あなたのシーツは
幸せで織られているの
ニンナ・ナンナ 明かりは消えたけれど
私の坊やは輝いている


イタリアの歌曲王、トスティの作品の中でも、耽美派詩人ガブリエレ・ダヌンツィオの詩に付けた曲はひときわ素晴らしい魅力を発揮しています。多くのトスティの曲は爽やか・流麗・雄弁だとすれば、これらダヌンツィオのテキストに付けた作品は「マリンコニア(哀愁)」や「アマランタの4つの歌」など、どれもそのひそやかに美しい旋律に痺れてしまいます。
緻密で繊細な美しいメロディもまたトスティの歌曲の美質であるということが分かって興味深いですが、これこそがトスティが大仰なオペラでなく歌曲に活躍の場を求めた大きな理由なのかも知れません。

詩人のダヌンツィオは明治期の有名な訳詩集「海潮音」でも冒頭で紹介されている人で、イタリア近代の作曲家でも、このトスティをはじめとして、レスピーギ、ピツェッティ、マリピエロといった多くの人達が曲を付けており、また三島由紀夫に影響を与え、ドビュッシーが曲を付けている「聖セバスチャンの殉教」や、ヴィスコンティの映画「イノセンス」の原作者としても知られています。
この「子守歌」は、ナイチンゲール(夜鳴ウグイス)の鳴き声のような間奏が入る、揺りかごをやさしくゆする舟歌のようなリズムのお母さんの歌が印象的です。
イタリア語の子供をあやす言葉「ニンナ・ナンナ」も素敵な響きですね。

この手の繊細な歌であれば、やはりトスティの歌曲を日本人としては多数録音している松本美和子さんのもの(Victor)が素晴らしいです。
男声で聴くとちょっと違和感はありますが、トスティ作品の中でもダヌンツィオの詩によるものだけを集めて録音したレナート・ブルゾンのバリトンのものも、ダヌンツィオ作品の一連の魅力を味わうという意味で聴いてみて損はありません(Nuova Era)。

( 2003.08.17 藤井宏行 )


TOPページへ  更新情報へ  作曲者一覧へ