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Dernier poème   FP 163  
 
最後の詩   
    

詩: デスノス (Robert Pierre Desnos,1900-1945) フランス
    Domaine public  Le dernier poème

曲: プーランク (Francis Poulenc,1899-1963) フランス   歌詞言語: フランス語


J'ai rêvé tellement fort de toi,
J'ai tellement marché,tellement parlé,
Tellement aimé ton ombre,
Qu'il ne me reste plus rien de toi,
Il me reste d'être l'ombre parmi les ombres
D'être cent fois plus ombre que l'ombre
D'être l'ombre qui viendra et reviendra
dans ta vie ensoleillée.

私は狂おしく夢に見た お前のことを
私は狂おしく歩き回り 狂おしく語り
狂おしく愛したのだ お前の幻を
もう私には何も残っていない お前のことは
残っているのはただ 影たちの中の影になることだけ
百倍も影らしい影となること どんな影よりも
影となって 行ってまた戻ることだ
太陽がいっぱいのお前の人生の中へと


プーランクと同世代のシュルレアリスト詩人ロベール・デスノスは、第二次世界大戦中はドイツに対するレジスタンス活動をしており、強制収容所に収容されてそこで衰弱し、解放されたものの亡くなってしまったようです。これは彼の最後に書いた詩とされているもので、一説によれば収容所の中で、煙草の包み紙か何かに書き記されたものだと言われています。シュールレアリズムな内容なのでいまひとつ意味が取れていないところはあるのですが(参照したいくつかの邦訳もかなり解釈がばらばらでした)、死んでもなお、愛する人のもとに影のように寄りそいたいという強い思いを綴ったもので、彼の妻ユキ(本名はリュシー・バドゥですが、洋行していた日本人画家藤田嗣治と恋におちて結婚、その際に彼に付けられたあだ名のYoukiが通称となったようです。その後藤田とは別れてこのデスノスの妻となりましたが、このような形でデスノスとは別れることとなりました)に宛てています。
プーランクがこれに曲をつけたのは1956年のこと。研ぎ澄まされた簡潔な響きが心に響いてきます。決して美しいメロディではありませんが詩と溶け合ってとても感動的。この曲をプーランクはユキに贈ったのだとか。彼女はプーランクとほぼ同時期の1964年に亡くなっています。

( 2014.08.15 藤井宏行 )


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