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Den’ li tsarit   Op.47-6  
  7 Romansov
太陽の照る昼間でも  
     7つのロマンス

詩: アフーチン (Aleksei Nikolayevich Apukhtin,1841-1893) ロシア
      День ли царит

曲: チャイコフスキー (Pyotr Ilyich Tchaikovsky,1840-1893) ロシア   歌詞言語: ロシア語


Den’ li tsarit,tishina li nochnaja,
V snakh li bessvjaznykh,v zhitejskoj bor’be,
Vsjudu so mnoj,moju zhizn’ napolnjaja,
Duma vse ta zhe,odna rokovaja,
Vse o tebe! Vse o tebe!
Vse,vse,vse,vse o tebe!

S neju ne strashen mne prizrak bylogo,
Serdtse vosprjanulo snova ljubja...
Vera,mechty,vdokhnovennoe slovo,
Vse,chto v dushe dorogogo,svjatogo,
Vse ot tebja! Vse,vse ot tebja!
Vse ot tebja!

Budut li dni moi jasny,unyly,
Skoro li sginu ja,zhizn’ zagubja!
Znaju odno,chto do samoj mogily
Pomysly,chuvstva,i pesni,i sily,
Vse dlja tebja! Vse dlja tebja!
Pomysly,chuvstva,i pesni,i sily,
Vse,vse,vse,vse dlja tebja!

太陽の照る昼間でも、夜の静寂の中でも
夢の中でも、また日々の戦いの中でも
どこであろうと私を、我が人生を満たしているのは
たったひとつのこと、かけがえのないこと それは
すべてあなたのこと!すべてあなたのこと!
すべて、すべて、すべて、すべてあなたのことなのだ!

私には過去の亡霊も恐ろしくない
心は再び愛にときめき
信頼も、夢も、ひらめきの言葉も
私の魂の中でかけがえなく、聖なるもの
すべてはあなたから!すべては、すべてはあなたから!
すべてはあなたから!

私の生きる日々が素晴らしかろうが、悲惨なものとなろうが
すぐにこの世を去り、人生が台無しになったとしても
たったひとつのことだけは分かっている、墓へ行くその時まで
思考も、感情も、歌も、力も
すべてあなたのためなのだ!すべてあなたのためなのだ!
思考も、感情も、歌も、力も
すべて、すべて、すべて、あなたのためなのだ!


 私にとっては、チャイコフスキーの歌曲は、大当たりのものはかけがえのない愛聴曲となるのですが、こんな曲どこが面白いのだろう?というのもたくさんあり、当たり外れの大きい作曲家です。
その中でもこの曲は大当たりの部類、彼の大傑作のバレエ曲、特に「眠りの森の美女」を歌曲にしたらこんな風になるだろうなという名曲だと思っています。ピアノの前奏は重々しく、勿体を付けて始まるのですが、歌が入る直前に急に流麗に流れ出します。そして詩をご覧いただければおわかりのような臆面もなく情熱的な歌がひたすら盛り上がってクライマックスへとなだれ込みます。
(ロシア版「オーソレミオ」と言っても良いでしょう。そういえばそんな感じのタイトルですね)
第3節の「思考も、感情も」のところのリフレインの盛り上げかたはまさに彼がバレエ音楽でよく使うテクニックを思い起こさせますし、そして最後の畳み掛けるようなVse,vse,vse(すべて、すべて、すべて)で力を凝縮させて、しかし最後の最後でふっと力を抜く、何回聴いても、ああよく出来た曲だなあと思います。
これは、ロシアの名バス歌手、ネステレンコの18番のようで、私の聴いたリサイタルでも休憩前の盛り上げ用に使われましたし、かれのCDでも最後を締めています。チャイコフスキー歌曲集を名乗るアルバムのかなりのものがこの曲で終わっているのではないかという気がするのですが気のせいでしょうか。それと一度これは明るい声質のテノールで聴いてみたいなあと思っているのですが、残念ながらまだ果たせていません。(1999.05.02)

ロシア語の原詩よりの訳を始める前のものは全体にひどい訳が多かったので、チャイコフスキー歌曲を集中的にアップしたのを機会に大幅に見直しました。またタイトルも世の中の定訳に従うこともなかろうと思い、「日は支配する」なんていう意味不明なものはやめることにしました。しかしこれは何度聴いても惚れ惚れするような名曲ですね。

( 2008.08.01 藤井宏行 )


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