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Japanese Lullaby    
 
日本の子守歌  
    

詩: フィールド (Eugene Field,1850-1895) アメリカ
      

曲: スタンフォード (Charles Villiers Stanford,1852-1924) アイルランド   歌詞言語: 英語


Sleep,little pigeon,and fold your wings,
Little blue pigeon with velvet eyes;
Sleep to the singing of mother-bird swinging
Swinging the nest where her little one lies.

Away out yonder I see a star,
Silvery star with a tinkling song;
To the soft dew falling I hear it calling
Calling and tinkling the night along.

In through the window a moonbeam comes,
Little gold moonbeam with misty wings;
All silently creeping,it asks,”Is he sleeping
Sleeping and dreaming while mother sings?”

Up from the sea there floats the sob
Of the waves that are breaking upon the shore,
As though they were groaning in anguish,and moaning
Bemoaning the ship that shall come no more.

But sleep,little pigeon,and fold your wings,
Little blue pigeon with mournful eyes;
Am I not singing?-see,I am swinging
Swinging the nest where my darling lies.

おやすみ、かわいい子鳩ちゃん、翼を閉じて
かわいい青の子鳩ちゃん、ビロードの目をした
おかあさん鳥の歌を聴いておやすみ 揺らしてるでしょ
おかあさんの可愛い子の寝てる巣を揺らしてる

空の向こうには 星が見える
銀色に光る星 きらめくように歌ってる
降る夜露に 星が呼びかける
呼びかけて、きらめいている 夜通しずっと

窓を通して 月の光が射し込む
やさしい金色の光が 魔法の翼に乗って
静かに忍び寄ってきて尋ねるの「坊やは眠っている?
眠って夢見てる おかあさんの歌を聴きながら?」って

海の向こうでは すすり泣きの声が浮かんでる
波たちが浜辺で砕けるときの声が
まるで苦しみ、悲しみ、うめいているよう
もう二度とやってこないあの船のことを嘆いて

でもおやすみ、かわいい子鳩ちゃん、翼を閉じて
かわいい青の子鳩ちゃん、悲しそうな目をした
歌ってないかしら?-ほら、揺らしてるでしょう
おかあさんの可愛い子の寝てる巣を揺らしてる


アイルランド出身でヴォーン・ウイリアムスやホルスト、アイアランドなどの師匠にあたるスタンフォードといえば、ブラームス張りの交響作品やハイネなどのドイツ語の詩に付けた歌曲などクラシック音楽の伝統にがちがちに従った作品があるかと思えば、他方アイリッシュ民謡の香り漂う民謡風の歌曲作品などを残しており、HyperionなどのイギリスのCDレーベルでいろいろ聴くことができます。しかしながら日本など東洋との接点がおよそあるとは思えない彼に「日本の子守歌」などという歌曲があろうとは驚きでした。

実はこの詩、アメリカのユージン・フィールド(1850-1895)という詩人が書いたものなのですが、この人、世界のあちこちの国や地域を題材にたくさんの子守歌を「子供時代の詩」という詩集の中にシリーズで作った人のようで、「オランダの子守歌」ですとか「シチリアの子守歌」、はたまた「アルメニアの子守歌」なんていうのもあります。
それらは別にその地域の名産品や名所旧跡を織り込んでいる訳ではなくあくまでイメージを膨らます題材として国の名前を使っているだけではないかと思います。
ですからこの「日本の子守歌」も副題に「小さな青い鳩」とあるようにお母さん鳩が子鳩に巣の中で優しく歌いかける詩であり、われわれ日本人にとって日本との接点が感じられる要素は全くありません。
当然それは作曲家スタンフォードにとっても同じこと、彼はこの曲にもアイリッシュメロディ特有の優しい、おだやかな旋律を付けました。
でも短調のメロディなのはちょっと日本の子守歌を連想させるかも...

Regisレーベルから出ているAn Edwardian Gentleman's SongbookというCDで、James Griffetのテナーでやさしく、やさしく歌われています。
スタンフォード作曲のもうひとつの傑作の子守歌(こちらは正真正銘のアイリッシュメロディーが素敵)も収録されていてなかなか良いです。

( 2003.08.17 藤井宏行 )


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