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Sonetto XVI   Op.22-1  
  Seven Sonnets of Michelangelo
ソネット第16番  
     ミケランジェロの7つのソネット

詩: ミケランジェロ (Michelangelo di Lodovico Buonarroti Simoni,1475-1564) イタリア
    Rime 84 Sì come nella penna e nell'inchiostro

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: イタリア語


Sì come nella penna e nell'inchiostro
È l'alto e 'l basso e 'l mediocre stile,
E ne' marmi l'immagin ricca e vile,
Secondo che 'l sa trar l'ingegno nostro;

Così,signor mie car,nel petto vostro,
Quante l'orgoglio,è forse ogni atto umile:
Ma io sol quel c'a me proprio è e simile
Ne traggo,come fuor nel viso mostro.

Chi semina sospir,lacrime e doglie,
(L'umor dal ciel terreste,schietto e solo,
A vari semi vario si converte),
Però pianto e dolor ne miete e coglie;

Chi mira alta beltà con sì gran duolo,
Dubbie speranze,e pene acerbe e certe.

ペンとインクがそうであるように
高貴と 低俗と 中庸なスタイルがある
大理石像にあっても 豊かにも 下品にもなり得る
私たちの創造性が及ぶ世界では

それゆえに わが親愛なるお方よ 御身の胸の中では
どれほどの誇りが その謙虚な思いの中にあるのであろうか
だが 私が描き出せるのは自分と同じものなのだ
私は描き出す まるで怪物の顔が現れるかのように

ため息と 涙と 苦しみを蒔く者は
(天より地上に降る露が 純粋にただひとつのものであっても
たくさんの種子は皆それぞれ違ったものに変わるのだ)
涙と悲しみを刈り取って集めるのだろう

高貴な美をそのような大きな苦しみと共に見つめる者は
疑わしい希望と そして苦くて確実な痛みを手にするのだ

ブリテンという人は、ネイティブ言語である英語だけに留まらず声楽作品において非常に多様な言語を取り上げた人です。このサイトで既に取り上げているものでも、「イリュミナシオン」はランボーのフランス語の詩をそのまま用いておりますし、「6つのヘルダーリン断章」ではドイツ語のテキストにメロディをつけています。他にもプーシキンの詩につけたロシア語の歌曲があったりして、いずれもそれぞれの国の一流の詩人の作品にメロディを付けているのが驚くべきところではあります。そんな彼にはルネッサンス期イタリアの美術の巨匠、ミケランジェロのイタリア語のソネット7篇に曲をつけたピアノ伴奏の歌曲作品もあり、彼のソロ声楽作品の中でも代表作のひとつとなっています。作曲は彼が第二次世界大戦の戦火を逃れて「盟友」のテノール歌手ピーター・ピアーズと北米に逃れていた1940年頃、そしてピアーズに献呈されています。
ミケランジェロのソネットは、ヴォルフやショスタコーヴィチも曲をつけておりますが、全部で300篇あまりもあって愛や政治や人生やその他諸々の結構多彩なもののようです。ところがブリテンはその中からもかなり偏った選択をしております。これがピアーズのことを意識してのことかどうかは何とも言えないところがありますが、やはりピアーズの影が色濃くにじみ出たOp.18の「イリュミナシオン」同様、非常に意味深長な歌曲集となっていることは間違いありません。
ということで、ピアーズをはじめとするソレっぽいテノール歌手によって取り上げられることの多い歌曲集ですが、堂々と美しい音楽には圧倒されてしまいます。
中には女声でこの曲に挑戦しているものもあり、なかなかに不思議な感触。深みのある詩につけたメロディを是非色々な演奏で味わって見て頂ければと思います。努力して訳詞をお届けしようと思いますので。
しかしこのイタリア語の詩、激烈に難解でうまく訳せている自信はありません。日本でもこのミケランジェロのソネットはほとんど訳されてはいないようでお手本となるものも極めて少なく、意味不明の誤訳だらけのものになっているとは思いますがご容赦頂ければと思います。

第1曲目は、芸術の多様性と、そして高みを目指す作者の心意気が歌われているようです。堂々とした力強い音楽はたいへんインパクトがあります。

( 2013.09.14 藤井宏行 )


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