Agnus Dei Op.66-5 War Requiem |
神の子羊(アニュス・デイ) 戦争レクイエム |
Tenor solo One ever hangs where shelled roads part. In this war He too lost a limb, But His disciples hide apart; And now the Soldiers bear with Him. Chorus Agnus Dei,qui tollis peccata mundi: Dona eis requiem. Tenor solo Near Golgatha strolls many a priest, And in their faces there is pride That they were flesh-marked by the Beast By whom the gentle Christ's denied. Chorus Agnus Dei,qui tollis peccata mundi: Dona eis requiem. Tenor solo The scribes on all the people shove and bawl allegiance to the state, Chorus Agnus Dei,qui tollis peccata mundi... Tenor solo But they who love the greater love Lay down their life; they do not hate. (From Owen's “At a Calvary near the Ancre”) Chorus ...Dona eis requiem. Tenor solo Dona nobis pacem. |
テノール・ソロ 人はいつも立ちつくす 爆撃された道が分かれるところ この戦争ではあの方もまた手足を失ったのだ しかし、彼の弟子たちはばらばらに隠れている そして今 兵士たちはあの方と共に進むのだ 合唱 神の子羊 この世の罪を取り除くお方 彼らに安息を与え給え テノール・ソロ ゴルゴタの丘の近くを多くの僧侶たちが歩いている 彼らの顔には誇りがある 彼らの体には刻印があるのだ あの獣による あのやさしいキリストを拒んだ獣の 合唱 神の子羊 この世の罪を取り除くお方 彼らに安息を与え給え テノール・ソロ 律法学者たちがすべての民衆たちに押し付け 主張している 国への忠誠を 合唱 神の子羊 この世の罪を取り除くお方・・・ テノール・ソロ しかし、より大いなる愛を愛する者たちは、 命を投げ出す、憎んだりはしない (『アンクル川のゴルゴタ』より) 合唱 彼らに安息を与え給え テノール・ソロ われらに平和を与え給え |
長大なこの作品にあってこの部分はわずか5分足らずの短い楽章。キリストの受難を歌ってはおりますが穏やかな安らぎに全体の雰囲気は支配されています。それが激しい詩との間で言い知れない違和感を生んでいます。最近何となく口にする人が増えてきたような「国への忠誠」という言葉のいかがわしさを糾弾しながら、それでもなお兵士たちは自分の命を投げ出すことを厭わない...戦争というものの不条理を凝縮した音楽の中に見事に描き出しています。
( 2013.07.13 藤井宏行 )