Sanctus Op.66-4 War Requiem |
聖なるかな(サンクトゥス) 戦争レクイエム |
"Soprano solo and chorus Sanctus, Sanctus, Sanctus Dominus, Deus Sabaoth Pleni sunt coeli et terra gloria tua. Hosanna, in excelsis! Benedictus Benedictus qui venit in nomine Domini. Hosanna, in excelsis! Baritone solo After the blast of lighning from the East, The flourish of loud clouds, the Chariot Throne; After the drums of time have rolled and ceased, And by the bronze west long retreat is blown, Shall life renew these bodies? Of a truth All death will He annul, all tears assuage? - Fill the void veins of Life again with youth, And wash, with an immortal water, Age? When I do ask white Age he saith not so: ""My head hangs weighed with snow."" And when I hearken to the Earth, she saith: ""My fiery heart shrinks, aching. It is death. Mine ancient scars shalls not be glorified, Nor my titanic tears, the sea, be dried."" (From Owen's ""The End (After the blast of lightning from the east)"") " |
ソプラノ・ソロと合唱 聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、 主 万軍の神 天と地は御身の栄光に満ちたり 万歳 いと高きところに! ベネディクトゥス 主の御名において来る者は祝福されたり 万歳 いと高きところに! バリトン・ソロ 東から、稲妻の閃光が走り 喧しい雲のファンファーレ、戦車の玉座 時を告げる太鼓が打ち鳴らされ それが止んだ後 そしてブロンズの西風によって退却ラッパが吹かれた後 生はこれらの体を蘇らせるのだろうか? 本当に、 すべての死を無としてくれるのか すべての涙を静めて? 命の空っぽの血管を再び若さで満たし そして洗ってくれるのか、不死の水で 老いを? 私が白い老いに問うと 彼は違うという: 「わしの頭は雪の重みに垂れさがっておる」と そして、私が大地に耳を傾けると 彼女は言う: 「私の燃える心は縮み、痛むのです それが死だから 私の古い傷痕は、もはや栄光に浴することはありません 私の巨大な涙 この海も 決して乾くことはないのです」 (『終末(東方から、稲妻が、トランペットの爆音を轟かせ)』より) |
ゴングが打ち鳴らされる他は全くの無伴奏でソプラノが歌うサンクトス、まるで何かの秘儀のようです。しばしの沈黙の後、合唱が静かに入ってきて、そして最後はブラスの絶叫とともに神を讃えます。一旦その爆発がおさまったあと「ベネディクトス」がソプラノと合唱の掛け合いで淡々と流れて行き、そして再び「ホザンナ」の爆発。一瞬にして静まったあとバリトンがオーウェンの哲学的な詩を物語りはじめます。
淡々とおどけた表情すら見せる音楽ですが、そこに広がっている光景は戦闘が休止したあとの、そこかしこに戦死者の遺体が散らばっているところ。実に生々しい情景を歌声は抑えた表情で私たちに告げます。「これらの死を甦らせてくれるのだろうか」のところでは流石に気持ちの昂ぶりが抑えられなくなって激しくなりますが、すぐに哲学的な瞑想に入って結局何も解決しないもどかしさのまま音楽は静かに消え行っていきます。
( 2013.06.28 藤井宏行 )