Abraham and Isaac Op.51 |
カンティクル第2番 アブラハムとイサク |
God speaks: Abraham,my servant,Abraham, Take Isaac,thy son by name, That thou lovest the best of all, And in sacrifice offer him to me Upon that hill there besides thee. Abraham,I will that so it be, For aught that may befall. Abraham: My Lord,to Thee is mine intent Ever to be obedient. That son that Thou to me hast sent Offer I will to Thee. Thy bidding done shall be. (Here Abraham,turning him to his son Isaac,saith:) Make thee ready,my dear darling, For we must do a little thing. This woode do on thy back it bring, We may no longer abide. A sword and fire that I will take, For sacrifice behoves me to make; God's bidding will I not forsake, But ever obedient be. (Here Isaac speaketh to his father,and taketh a bundle of sticks and beareth after his father,and saith:) Isaac: Father,I am all ready To do your bidding most meekely, And to bear this wood full bayn am I, As you commanded me. (Here they both go to the place to do sacrifice) Abraham: Now,Isaac son,go we our way To yonder mount if that we may. Isaac: My dear father,I will essay To follow you full fain. (Abraham being minded to slay his son Isaac,lifts up his hands,and saith the following:) Abraham: O! My heart will break in three, To hear thy words I have pitye; As Thou wilt,Lord,so must it be, To Thee I will be bayn. Lay down thy faggot,my own son dear. Isaac: All ready,father,lo it is here. But why make you such heavy cheer? Are you anything adread? Abraham: Ah! Dear God! That me is woe! Isaac: Father,if it be your will, Where is the beast that we shall kill? Abraham: Thereof,son,is none upon this hill. Isaac: Father,I am full sore affeared To see you bear that drawne sword. Abraham: Isaac,son,peace,I pray thee, Thou breakest my heart even in three. Isaac: I pray you,father,[layn]2 nothing from me, But tell me what you think. Abraham: Ah! Isaac,Isaac,I must thee kill! Isaac: Alas! Father,is that your will, Your owne child for to spill Upon this hilles brink? If I have trespassed in any degree With a yard you may beat me; Put up your sword,if your will be, For I am but a child. Would God my mother were here with me! She would kneel down upon her knee, Praying you,father,if it may be, For to save my life. Abraham: O Isaac,son,to thee I say God hath commanded me today Sacrifice,this is no nay, To make of thy bodye. Isaac: Is it God's will I shall be slain? Abraham: Yea,son,it is not for to layn. (Here Isaac asketh his father's blessing on his knees,and saith:) Isaac: Father,seeing you mustë needs do so, Let it pass lightly and over go; Kneeling on my knees two, Your blessing on me spread. Abraham: My blessing,dear son,give I thee And thy mother's with heart free. The blessing of the Trinity, My dear Son,on thee light. (Here Isaac riseth and cometh to his father,and he taketh him, and bindeth and layeth him upon the altar to sacrifice him,and saith:) Come hither,my child,thou art so sweet, Thou must be bound both hands and feet. Isaac: Father,do with me as you will, I must obey,and that is skill, Godës commandment to fulfil, For needs so it must be. Abraham: Isaac,Isaac,blessed must thou be. Isaac: Father,greet well my brethren ying, And pray my mother of her blessing, I come no more under her wing, Farewell for ever and aye. Abraham: Farewell,my sweetë son of grace! (Here Abraham doth kiss his son Isaac,and binds a kerchief about his head.) Isaac: I pray you,father,turn down my face, For I am sore adread. Abraham: Lord,full loth were I him to kill! Isaac: Ah,mercy,father,why tarry you so? Abraham: Jesu! On me have pity, That I have most in mind. Isaac: Now,father,I see that I shall die: Almighty God in majesty! My soul I offer unto Thee! Abraham: To do this deed I am sorrye. (Here let Abraham make a sign as tho' he would cut off his son Isaac's head with his sword; then...) God speaks: Abraham,my servant dear, Lay not thy sword in no manner On Isaac,thy dear darling. For thou dreadest me,well wot I, That of thy son has no mercy, To fulfil my bidding. Abraham: Ah,Lord of heaven and King of bliss, Thy bidding shall be done,i-wiss! A hornëd wether here I see, Among the briars tied is he, To Thee offered shall he be Anon right in this place. (Then let Abraham take the lamb and kill him.) Sacrifice here sent me is, And all,Lord,through Thy grace. envoi: Such obedience grant us,O Lord! Ever to Thy most holy word. That in the same we may accord At this Abraham was bayn; And then altogether shall we That worthy King in heaven see, And dwell with Him in great glorye For ever and ever. Amen. |
神はおっしゃられる: アブラハム わがしもべアブラハムよ イサクを連れ行け その名の汝の息子 汝がこの上なく愛する者を そして生贄としてその子をわれに捧げるのだ あの丘の上 汝の傍らで アブラハムよ われはかくなることを望む ともかく何があろうとも アブラハム: わが主よ 御身にわが意志は 常に従いましょう 御身がわれに遣わしたるかの息子を われは御身に捧げましょう 御身のご命令はなされなくてはならぬのですから (かくてアブラハムは 息子イサクに向かい 言う:) お前は仕度をするのだ わが愛しの子よ われらにはちょっとすることがあるのだ この薪をお前の背中に背負って行け われらはぐずぐずできぬのだ 剣と火はわしが持って行こう 生贄をわしは捧げねばならぬからな 神のご命令は打ち捨ててはならぬのだ 常に従わなくてはならぬ (そしてイサクは父に言う 薪の束を掴み 抱えて父の後に従いつつ言う:) イサク 父上 私はすっかり仕度ができました あなたの言いつけに素直に従いましょう この薪も喜んで運びましょう あなたが命じられた通りに (彼らは一緒に生贄を捧げる場所に行く) アブラハム: さあ 息子イサクよ われらが道を進むのだ あちらの山へと もしもそうして良いのであれば イサク 愛しの父上 そう致しましょう あなたにつき従いましょう 喜んで (自分の息子イサクを手にかけることを決心したアブラハムは 両手を挙げて次のように言う:) アブラハム: おお!わが心臓は三つに裂けるであろう 御身の言葉を聴くことはわが悲しみ だが御身が望まれることなれば 主よ その通り致しましょう 御身のため われは進んで従いましょう 薪の束を置くのだ わが愛しの息子よ イサク 仕度はできています父上 ご覧ください ここを ですが なぜあなたはそのように暗い顔をされているのですか? 何か心配事でもあるのですか? アブラハム: ああ!親愛なる神よ! われは悲しい! イサク: 父上 そうなさりたいとのことでしたが どこに屠る獣はいるのですか? アブラハム: それなのじゃ 息子よ この丘にはおらぬ イサク 父上 私は恐ろしゅうございます あなたがその剣を振り上げるのを見るのは アブラハム: イサクよ 息子よ 平安あれ わしはお前のために祈るぞ お前はわが心臓を三つに引き裂いてしまうのだ イサク お願いです 父上 何も私に隠すことなく 何をお考えなのか話してください アブラハム: ああ!イサクよ イサク わしはお前を殺さねばならぬのだ! イサク ああ!父上 それはあなたの御意志なのですか 自らの子を殺そうとなさるとは この丘の際のところで? もしも私が道を踏み外しているのでしたら 鞭であなたは私を打てば良いこと 剣をお仕舞い下さい もしよろしければ 私はまだ子供なのです 神様は望まれるのですか もし私の母上がここに一緒に居ても! 母上はひざまずいて 私のために祈ります 父上 もしできることならば 私の命を助けるために アブラハム: おおイサク 息子よ お前に話そう 神様が今日 わしにお命じになったのだ 生贄として 何があろうとも お前の体を捧げるようにと イサク: では神様の御意志で私は殺されるのですか? アブラハム: そうなのだ 息子よ それは偽りようもないこと (ここにイサクは父の祝福をひざまずいて求め そして言う) イサク 父上 もしそうせざるを得ないのでしたら ひと思いに済ませてしまいましょう ここに両の膝をついております あなたの祝福を私にくださいませ アブラハム わが祝福を いとしき息子よ お前に与えよう お前の母の祝福も自由な心で与えるのだ 三位一体の祝福が 愛しき息子よ お前の上にあらんことを (ここにイサクは立ち上がり父のもとへと行く 父は彼を縛って生贄の祭壇の上に横たえ そして言う) こちらへ来なさい わが子よ お前はとても愛おしい だがお前の手足は縛られねばならぬのだ イサク 父上 あなたのなさりたいとおりにしてください 私は従いましょう それが大事なのです 神のご命令は満たされねばなりません その通りになされねばならないのです アブラハム イサクよ イサク お前は祝福されるだろう イサク 父上 私の兄弟たちによろしくお伝えください そしてわが母上の祝福もまたお祈りください 私はもう 母の翼の下で守られることもないのです では永遠のお別れです アブラハム さらばだ わが愛しの息子よ (ここにアブラハムは息子イサクにくちづけをし 布を彼の頭に巻く) イサク お願いいたします 父上 顔を下に向けてください 私はあまりに恐ろしいのです アブラハム 主よ 彼を殺すことは嫌でたまりません イサク ああ お慈悲を 父上 なぜためらわれるのです? アブラハム イエスよ!私を憐れとお思いください 憐みこそがわが心が最も求めていること イサク さあ 父上 私は死にましょう 偉大なる全能の神よ 私の魂は御身のもとに捧げましょう アブラハム このようなことをせねばならぬとは悲しいことだ (ここにアブラハム 息子の首を彼の剣で切り落とそうとするかのような動作をする) 神はおっしゃられる: アブラハムよ わが愛するしもべよ 汝の剣をいかなることがあろうとも このイサク 汝の愛しき者にふるってはならぬ 汝が私を畏れておることは良く分かった 汝の息子に情けをかけることなく わが命に従わんとしたことで アブラハム ああ 天なる主よ 至福の王よ 御身の命は満たされましょう! ここに角のある雄羊があり あの茂みに結わえつけられております 御身にこれを捧げましょう 今すぐ この場所で (そしてアブラハムは雄羊を捕え それを屠る) 生贄が私のもとに送られました すべては 主よ 御身の恩寵を通じてのこと 終わりのことば かような従順さをわれらにお与えください おお主よ! 御身の最も聖なる御言葉に 同じようにわれらも従順になれますように ちょうどアブラハムが従おうとしたように そしてわれらは皆で集い 偉大な王に天でまみえることができますように そして主のもと 大いなる栄光のうちに住むことができますように 永遠に アーメン |
1952年の作品、初演はテノールのピアーズとアルトのフェリアーというイギリスが誇る黄金コンビ歌手だったそうです。女声の方はボーイソプラノ(又はアルト)でよりシチュエーションに近い役柄で歌われることも多いようです。旧約聖書の物語を題材としていますが、このテキストは15世紀のイングランドの宗教劇のテキストから。そんなこともあって旧約には出てこないはずのイエス様もアブラハムのつぶやきの中に現れてきています。
( 2013.06.14 藤井宏行 )