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Offertorium   Op.66-3  
  War Requiem
奉献頌(オッフェトリウム)  
     戦争レクイエム

詩: 聖歌 (Hymn,-)   &  オーウェン (Wilfred Edward Salter Owen,1893-1918) 
    死者のためのミサ曲  Offertorium / The parable of the Old Man and the Young (Owen)

曲: ブリテン (Edward Benjamin Britten,1913-1976) イギリス   歌詞言語: ラテン語/英語


Boys' choir
Domine Jesu Christe,Rex gloriae,
libera animas omnium fidelium defunctorum
de poenis inferni et de profundo lacu:
libera eas de ore leonis,
ne absorbeat eas tartarus,
ne cadant in obscurum.

Choir
Sed signifer Sanctus Michael
repraesentet eas in lucem sanctam:
Quam olim Abrahae promisisti,
et semini eius.

Tenor and baritone soli
So Abram rose,and clave the wood,and went,
And took the fire with him,and a knife.
And as they sojourned both of them together,
Isaac the first-born spake and said,My Father,
Behold the preparations,fire and iron,
But where the lamb for this burnt-offering?
Then Abram bound the youth with belts and straps,
And builded parapets and trenched there,
And streched forth the knife to slay his son.
When lo! and angel called him out of heaven,
Saying,Lay not thy hand upon the lad,
Neither do anything to him. Behold,
A ram,caught in a thicket by its horns;
Offer the Ram of Pride instead of him.
But the old man would not so,
but slew his son,-
And half the seed of Europe,one by one.
(From Owen's “The Parable of the Old Man and the Young”)


Boys' choir
Hostias et preced tibi,
Domine blaudis offerimus.
Tu suscipe pro animabus illis,
quarum hodie memoriam facimus.
Fac eas,Domine,de morte transire ad vitam.
Quam olim Abrahae promisisti,
et semini eius.

Chorus
...Quam olim Abrahae promisisti,
et semini eius.


少年合唱
主イエス・キリスト 栄光の王よ、
全ての死せる信者の魂を救い給え
地獄の罰と深き洞穴より
彼らの魂を獅子の口から解き放ち給え
彼らを冥府が飲み込まぬように
彼らが暗黒に落ちぬように

合唱
そうではなく旗手の聖ミカエルが
彼らを聖なる光へと導きますように
かつて御身がアブラハムと約束されたように
そして彼の子孫と

テノールとバリトン・ソロ
そこでアブラハムは起き上がり、薪を割って、出かけた
彼はたいまつを手にしていた そしてナイフを
彼ら二人が一緒に休んでいた時に、
最初の子イサクが、話して言った「父よ
準備したものをご覧ください。火と鉄とを
ですが生贄に焼くための小羊はどこですか?」
すると、アブラハムは息子を帯と紐で縛り
そこに柵をめぐらし 塹壕を掘って
ナイフを伸ばして 息子を切り裂こうとした。
そのとき見よ! 天使が空から彼に呼びかけた
言うには「お前の手をその若者にかけてはならぬ
彼に何もしてはならぬのだ 見よ!
牡羊を その角を茂みに取られている
この高慢の子羊を彼の代わりに捧げるがいい
だがこの老人はそうしなかった
息子を屠ったのだ
そしてヨーロッパの種の半分をも 一粒また一粒と
(『アブラハムとイサクの寓話』より)


少年合唱
生け贄と祈りを御身に
主よ、讃え捧げまつらん
彼らの魂のためにお受け取りください。
今日、われらが追悼するその魂のために。
彼らを移し給え 主よ その魂を死から生へと
かつて御身がアブラハムと約束されたように
そして彼の子孫と

合唱
かつて御身がアブラハムと約束されたように
そして彼の子孫と


オルガンの鋭い響きに乗せて、児童合唱のこれまた突き刺すような祈りの歌声が響きます。管弦楽と共に今度は大人の合唱が激しく参入してきて、旧約聖書のアブラハムとイサクの物語に言及しますが、それを受けてのテナーとバリトンが歌うオーウェンの詩はこの物語を下敷きにしながらも何とも恐ろしい結末。人間の不幸な性を嫌というほどに見せつけてくれるようです。この物語の部分、最初は快活にユーモアさえ漂わせて始まるのですが、最後はそのユーモアが苦々しく終わります。児童合唱が静かに歌う生贄への祈りが、ソリストの「一粒 また一粒」という言葉と掛け合いながら(この「一粒」が戦争で死んだひとりの人間を意味することは言わずもがなですね)

ブリテンはこのアブラハムとイサクの物語を、1952年、「カンティクル第2番」で取り上げています。こちらの方もご参考までに今回アップしましたのでご参照ください。

カンティクル第2番 アブラハムとイサク Op.51 (ベンジャミン・ブリテン)

( 2013.06.15 藤井宏行 )


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