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Guitare    
 
ギター  
    

詩: ユゴー (Vicomte Victor Marie Hugo,1802-1885) フランス
    Les Rayons et les Ombres 23 Autre Guitare

曲: マスネ (Jules-Emile-Frederic Massenet,1842-1912) フランス   歌詞言語: フランス語


Comment,disaient-ils,
Avec nos nacelles,
Fuir les alguazils?
Ramez,disaient-elles.

Comment,disaient-ils,
Oublier querelles,
Misère et périls?
Dormez,disaient-elles.

Comment,disaient-ils,
Enchanter les belles
Sans philtres subtils?
Aimez,disaient-elles.

「どうやって」彼らは尋ねた
「ぼくたちのボートで
 スペインの警官から逃げるの?」
「漕ぐのよ」彼女たちは答えた

「どうやって」彼らは尋ねた
「忘れるの 争いごとや
 ひどい不幸や危険のことを?」
「眠るのよ」彼女たちは答えた

「どうやって」彼らは尋ねた
「美人たちをモノにできるの
 惚れ薬なしで?」
「愛するのよ」彼女たちは答えた


スペイン情緒満載のまるでカルメンとホセの会話を思わせるようなビゼーのもの、なんともお上品なサロン音楽にしてしまったラロのもの、あるいはリアルな会話仕立てで聴かせるリストのものなど、この他愛もない感じのユゴーの詩にはたくさんの作曲家が曲をつけています。
有名なところでは他にもゴーダールやサン・サーンスなども。そしてこのマスネもこの詩につけた曲があるのですが、私は今まで全くのノーマークでした。今年の5/3に東京であったアンドリーア・ソアレのソプラノ、フィリップ・カサールのピアノによるフランス歌曲リサイタルのアンコール曲でこれが取り上げられるまでは。このリサイタル、歌だけでなくフランスの詩にもスポットを当てた選曲で、ユゴーに始まってラマルティーヌ、ゴーティエ、ヴェルレーヌとくるあたりになかなかのこだわりを感じましたが、アンコールのユゴーにこのマスネを選ぶというのは意外でした。
しかしこの曲、上に挙げたどの作曲家の作品とも違う独自の世界を作っています。この詩がもつ滑稽感をほのかに滲み出させてたいへんに微笑ましい仕上がり、確かにアンコールに持ってくるには上のどの作曲家の曲よりもお勧めです。ソプラノのソアレもたっぷりのおどけた表情を見せてたいへん楽しく歌ってくれていました。Youtubeで唯一見つけたこの曲(Caitlyn Glennonというひとが歌っている)でも表情豊かに歌われていましたので、そんな風に歌うのがこの曲のスタンダードなのかも知れません。

( 2013.05.03 藤井宏行 )


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