The Driving Boy (1) Op.44-4a Spring Symphony |
馬を駆る少年(1) 春の交響曲 |
When as the rye reach to the chin, And chopcherry, chopcherry ripe within, Strawberries swimming in the cream, And school-boys playing in the stream; Then O, then, O then O, my true love said, Till that time come again, She could not live a maid. |
ライ麦が顎の高さまで伸びる時 サクランボが中まで熟す時 イチゴがクリームの中を泳ぎ 学童の少年たちが川の流れで遊ぶとき そういえばおお そういえばおお そういえばおお 恋人は言ったっけ そのときまでに帰ってきていなかったら 彼女はもう処女ではありえないと |
こういう詩を少年合唱に歌わせるのもどうかとは思いますが、ブリテンらしい皮肉の効いた曲であるとも言えましょう。もっとも最後の「処女」は原詩ではMaid(乙女)ですから私の訳ほど露骨ではないのですが(成長して大人になってしまうということを歌ってるんだよ、とでもいたいけな少年たちには合唱指揮のひとは教えたりしてるんでしょうか)。詩はシェイクスピアの「ハムレット」、オフィーリアの狂乱の場で彼女によって歌われる「今日はバレンタインの日」を思い起こさせます。この言い回しは当時のイギリスではよく用いられていたということでしょうか。詩のジョージ・ピール(1558-1598)は16世紀に活躍した詩人&劇作家です。
馬を駆って疾走していく少年の鼻唄ということでとても軽快に、リズムに乗って歌われます。詩に使われている言葉もリズミカルで、この音楽に絶妙に溶け合っています。
( 2013.03.30 藤井宏行 )