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La Diva de l'Empire    
 
ランピール劇場の歌姫  
    

詩: ボノー (Dominique Bonnaud,1864-1943) フランス  & ブレス (Charles Bessat dit Numa Blès,1871-1917) フランス
      

曲: サティ (Alfred Erik Leslie Satie,1866-1925) フランス   歌詞言語: フランス語


Sous le grand chapeau Greenaway,
Mettant l'éclat d'un sourire,
D'un rire charmant et frais
De baby étonné qui soupire,
Little girl aux yeux veloutés,
C'est la Diva de l'Empire.
C'est la rein' dont s'éprennent
Les gentlemen
Et tous les dandys
De Piccadilly.

Dans un seul “yes” elle met tant de douceur
Que tous les snobs en gilet à coeur,
L'accueillant de hourras frénétiques,
Sur la scène lancent des gerbes de fleurs,
Sans remarquer le rire narquois
De son joli minois.

Sous le grand chapeau Greenaway,
Mettant l'éclat d'un sourire,
D'un rire charmant et frais
De baby étonné qui soupire,
Little girl aux yeux veloutés,
C'est la Diva de l'Empire.
C'est la rein' dont s'éprennent
Les gentlemen
Et tous les dandys
De Piccadilly.

Elle danse presque automatiquement
Et soulève,oh très pudiquement,
Ses jolis dessous de fanfreluches,
De ses jambes montrant le frétillement.
C'est à la fois très très innocent
Et très très excitant.

Sous le grand chapeau Greenaway,
Mettant l'éclat d'un sourire,
D'un rire charmant et frais
De baby étonné qui soupire,
Little girl aux yeux veloutés,
C'est la Diva de l'Empire.
C'est la rein' dont s'éprennent
Les gentlemen
Et tous les dandys
De Piccadilly.

大きなグリーナウェイ帽の下で
満面の微笑みを見せる
魅力的だけど冷たい笑い声は
あっと息をのんでいるベイビーのよう
ビロードのような瞳を持つリトル・ガール
それがランピール劇場の歌姫だ。
その腰つきが夢中にさせるのだ
ジェントルマンたちや
すべてのダンディーたちを
ピカデリー中の....

ほんのひとこと「イエス」と彼女が甘くささやけば
ハートのチョッキを着たスノッブたちは皆、
熱狂的な歓呼で彼女を迎え、
舞台に向かって花束を投げる。
彼女の可愛い顔がふと見せる
冷たい笑いに気付くことなく

大きなグリーナウェイ帽の下で
満面の微笑みを見せる
魅力的だけど冷たい笑い声は
あっと息をのんでいるベイビーのよう
ビロードのような瞳を持つリトル・ガール
それがランピール劇場の歌姫だ。
その腰つきが夢中にさせるのだ
ジェントルマンたちや
すべてのダンディーたちを
ピカデリー中の....

彼女はまるで機械人形のように踊る
そして飛び跳ねる、おお、とても慎ましやかに
彼女の可愛い下着のフリフリが
ふともものところからチラチラ見える
そいつはとっても無邪気でもあるし
そしてとってもエキサイティング

大きなグリーナウェイ帽の下で
満面の微笑みを見せる
魅力的だけど冷たい笑い声は
あっと息をのんでいるベイビーのよう
ビロードのような瞳を持つリトル・ガール
それがランピール劇場の歌姫だ。
その腰つきが夢中にさせるのだ
ジェントルマンたちや
すべてのダンディーたちを
ピカデリー中の....


サティっぽい曲ということなら、シュールな詩に冷めた旋律の曲が「ダフェネオ」などいくつもあって、こちらの方が彼本来の魅力をより発揮しているとは思いますが、このカフェのために書かれたシャンソンも、旋律の美しさでは捨て難い魅力です。
彼のシャンソンでは、もっと有名な「あなたが大好き」というのもありますけれども、私はこちらの方の皮肉っぽさやくるくる変わる表情の楽しさの方にずっと惹かれます。
詩もロンドンが舞台なためか、フランス語の中にBabyやLittle Girlと英語の単語も織り交ぜてイギリス人を小馬鹿にしているのかも知れません。英国紳士のスケベ振りをユーモラスに描いています。歌詞を見るからにけっこうロリータ系の女の子のようですが、19世紀末のイギリスでもそういう趣味が盛んだったのでしょうか?
「そしてとてもエキサイティング Et tres tres excitant.」のところでおどけて声を変えるところなどちょっとやりすぎかも。

歌では、アメリンクのが絶品ではないでしょうか。もしかしたらドビュッシーやシューベルトの名唱を差し置いて、これが彼女のベストなのではとさえ思うことがあります。とにかくあの透き通るような声に変幻自在の色を付けて、この美しくも皮肉な曲を歌うのを聴くと、歌詞のなかの「魅力的だけど冷たい笑顔」というのがまさにピッタリくるのです。
他に面白いなと思ったのは、キャシー・バーベリアンの歌で、こちらは歌舞伎の11代目団十郎でも見ているかのような重厚さ、アメリンクのような軽やかさに欠けるのは残念ですがこれも結構強烈です。
あとはフランス歌曲では大御所的存在のレジーヌ・クレスパンの、これもまたしっとりと味わい深い歌もありました。
そういえばバブルのちょっと前頃に一花さいたサティブーム、一体どうなっちゃったんでしょうか?

(藤井宏行)1998.07.09 (2003.9.20改訂)

こちらもコンサートで使って下さるという方がおられましたので、それを機に少し訳詞を見直しました。原詩の醸しだす皮肉な感じが前よりもうまく引き出せていれば良いのですが。それと作詞のドミニク・ボノー(Dominique Bonnaud 1864-1943)の方は著作権は切れていました。もうひとりのニュマ・ブレスの方が生没年が良く分からなかったのですが、一応原詩掲載も問題ないかと判断しまして追記させて頂きます。ところどころに交えられた巧妙な英語の単語もご堪能ください。

( 2008.09.21 藤井宏行 )


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