Und dann nicht mehr Op.87-3 TrV 258,AV 114 Vier Gesänge |
そしてそれは二度とはなかった 4つの歌 |
Ich sah sie nur ein einzigmal, und dann nicht mehr; da sah ich einen Himmelsstrahl, und dann nicht mehr. Ich sah umspielt vom Morgenhauch durchs Tal sie gehn; da war der Frühling im Tal, und dann nicht mehr. Im Saal des Festes sah ich sie entschleiern sich, da war das Paradies im Saal, und dann nicht mehr. Sie war die Schenkin,Lust im Kreis kredenzte sie; sie bot mir lächelnd eine Schal', und dann nicht mehr. Sie war die Ros',ich sah sie blühn im Morgentau; am Abend war die Rose fahl, und dann nicht mehr. Nur einmal weinet Gärtner Lenz um eine Ros', da Tod ihm diese Rose stahl, und dann nicht mehr. Ein einzigmal,da sie erblich, war herb die Lust des Lebens,süß des Todes Qual, und dann nicht mehr. Ich sah die Rose Braut im Flor verschließen in die dunkle Kammer eng und schmal, und dann nicht mehr. Ich will ins Rosenbrautgemach im Mondenglanz noch weinen meiner Tränen Zahl, und dann nicht mehr. Ich sah sie nur ein einzigmal, und dann nicht mehr, da sah ich einen Himmelsstrahl, und dann nicht mehr. |
私は彼女をただ一度だけ見た そしてそれは二度とはなかった そこで私は天国の光を見たのだ そしてそれは二度とはなかった 私は見た 朝のそよ風が戯れる中 谷間を抜けて彼女がやってくるのを 谷間は春だった そしてそれは二度とはなかった 祝宴の広間で私は見た 彼女が ヴェールを脱ぐのを 広間の中は天国だった そしてそれは二度とはなかった 彼女は酌をして回った 陽気さを輪の中に 注いで回っていた 彼女はほほ笑みながら私にくれた 一杯の盃を そしてそれは二度とはなかった 彼女はバラの花だった 私は彼女が咲き誇るのを見た 朝露の中で 夕べにはバラはしおれた そしてそれは二度とはなかった ただ一度だけ庭師の春は泣いた 一輪のバラのことで 死が彼からそのバラを奪ったのだ そしてそれは二度とはなかった その一瞬 彼女が蒼ざめた時に 喜びは苦いものになった この人生の 死の苦悩が甘美なものになったのだ そしてそれは二度とはなかった 私は見た バラの花嫁が花に埋もれて 閉じ込められているのを 狭くて細長い 暗い部屋の中に そしてそれは二度とはなかった 私は行きたい バラの花嫁の部屋に 月の光の中の なおも数知れず私の涙は流れる そしてそれは二度とはなかった 私は彼女をただ一度だけ見た そしてそれは二度とはなかった そこで私は天国の光を見たのだ そしてそれは二度とはなかった |
バスのための歌曲集Op.87、第3曲は再びリュッケルトの詩です。これもシュトラウスお得意の濃厚なメロディが紡ぎだされる歌曲ですが、やはり「バラの騎士」を思わせるような沈みゆく黄昏の太陽といった感じが何とも言えず魅力的。実際は先に逝ってしまった彼女(妻でしょうか?)を悼むような詩ですが、悲しみを吹っ切ったかのような静かな明るさがにじみ出ています。
( 2012.10.14 藤井宏行 )