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Es stürmet am Abendhimmel   Op.89-1  
  Sechs Gesänge von Wielfried von der Neun
夕暮れの空に突風が吹き荒れ  
     フォン・デア・ノインの6つの詩

詩: フォン・デア・ノイン (Wilfried Von der Neun,1826-1916) ドイツ
      

曲: シューマン,ロベルト (Robert Alexander Schumann,1810-1856) ドイツ   歌詞言語: ドイツ語


Es stürmet am Abendhimmel,
Es zittert der Sonne Licht,
Im Äther die eine Wolke
Von Lust und Lieb' ihr spricht.

Die Wolke,vom Sturm gezogen,
Dehnt weit die Arme aus,
Sie glüht im Purpur der Liebe
Und wirbt im Sturmgebraus.

Da scheidet die Braut von dannen,
Die Wolke der Sturm entrafft;
Der Purpur ist all verschwunden,
Schwarz ist sie und grausenhaft.

夕暮れの空に突風が吹き荒れ
太陽の光を震わせる
空にはひとひらの雲が
喜びと愛とを太陽に語る

雲は 嵐に吹かれて
その腕を大きく拡げる
雲は愛のあまり深紅に燃えて
求婚するのだ 荒れ狂う風の中で

だが花嫁はそこから去っていってしまう
嵐が連れ去った雲からは
深紅の色はすっかり消えて
真っ黒になって恐ろしげだ


ハイネやアイヒェンドルフ、レーナウなどの大詩人につけた歌曲集ほどポピュラーではないですが、1950年に作曲されたこの歌曲集も多彩な詩と音楽の内容でじっくり聴くとなかなか味わい深いものがあります。詩人も無名とは言いながら、歌の詞としては結構印象の強いもののように私には思えますが、残念ながらシューマンの作風がかなり晦渋さを加えた時期のために、歌の年1840年の一連の歌曲のようには耳に優しくないのがあまり取り上げられない理由なのでしょう。
第1曲は風の吹き荒れる夕暮れの情景。流れ行く雲が夕焼け空を暗くしたり明るくしたりしているところでしょうか。ドイツ語では太陽も雲も女性名詞ですので、なんとなく倒錯の雰囲気も匂わせていますが。音楽は不穏な感じを漂わせながら始まりますが、雲が愛に悶える第2節後半あたりでは突然ロマンティックになり、そしてまた暗く沈んで消え去るように終わります。

( 2012.09.22 藤井宏行 )


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