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仏陀  或は「世界の謎」    
 
 
    

詩: 萩原朔太郎 (Hagiwara Sakutarou,1886-1942) 日本
    定本青猫  

曲: 石渡日出夫 (Ishiwata Hideo,1912-2001) 日本   歌詞言語: 日本語


赭土の多い丘陵地方の
さびしい洞窟の中に眠つてゐるひとよ
君は貝でもない 骨でもない 物でもない。
さうして磯草の枯れた砂地に
ふるく錆びついた時計のやうでもないではないか。
ああ 君は「真理」の影か 幽霊か
いくとせもいくとせもそこに坐つてゐる
ふしぎの魚のやうに生きてゐる木乃伊(みいら)よ。
このたへがたくさびしい荒野の涯で
海はかうかうと空に鳴り
大海嘯(おほつなみ)の遠く押しよせてくるひびきがきこえる。
君の耳はそれを聴くか?
久遠(くをん)のひと 仏陀よ!



萩原朔太郎のスケールの大きな詩に、音楽も負けじと畳み掛けてきます。洞窟の中の石仏か、あるいは即身成仏をした人の遺骸なのか? 不思議な情景描写が、赤茶けた色合いを強調した中で綴られて行きます。

( 2012.08.03 藤井宏行 )


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