Alte Laute Op.35-12 Zwölf Gedichte von Justinus Kerner |
昔の響き ケルナーの詩による12の歌曲 |
Hörst du den Vogel singen? Siehst du den Blütenbaum? Herz! kann dich das nicht bringen Aus deinem bangen Traum? Was hör' ich? Alte Laute Wehmüt'ger Jünglingsbrust, Der Zeit,als ich vertraute Der Welt und ihrer Lust. Die Tage sind vergangen, Mich heilt kein Kraut der Flur; Und aus dem Traum,dem bangen, Weckt mich ein Engel nur. |
お前は鳥の歌うのが聴こえるかい 木に花が咲き誇っているのが見えるかい 心よ、お前は恐ろしい夢から 自分を連れ出すことが出来ないのだろうか 何が聴こえるのだろう、悩みに満ちた 青春時代の、心の懐かしい響き それは私がこの世を信じ、 その喜びを知っていた頃の響きだ あの頃は去ってしまった 牧場のハーブも私を癒してはくれない そして恐ろしい夢から 天使だけが私を目覚めさせてくれる |
シューマンの歌曲集の中でも、ケルナーの詩による歌曲集は独特の雰囲気をもっ
たものです。この中の有名な「初めての緑」という歌曲に寄せた素晴らしいオマー
ジュを吉田秀和氏が書いているのもよくご存知と思います。
このケルナーの詩による歌曲集の最後に置かれた2つの歌曲(「誰が君を病んで傷
つけたのだ」と「昔の響き」)も忘れがたい曲です。詩はそれぞれ別のものなので
すが、あたかも一つの連続した有節歌曲のように作られています。いわば歌詞の
2番に相当する「昔の響き」はアクセントなどは微妙に変えられていますが、メロ
ディーはほとんど同じです。最後の「そして恐ろしい夢から僕を天使だけが目覚
めさせてくれる」で天使という言葉に特別のアクセントがつけられており、この
天使はクララのことを指すといわれています。
また詩の内容の持つ現代性にも驚かされる。このような詩を選んだシューマンも
なぞの多い音楽家です。
結構この歌曲集は(抜粋も含めて)録音がたくさんあります。
1.ハンス・ホッターとムーア(この2曲と「初めての緑」)
例によって、とつとつと歌っているが繰り返し聞いていると、本当に心の中に染
み込んでくる。ホッターのレパートリーにケルナー歌曲集全曲そのものはなかっ
たのかもしれませんが、全曲の録音を残して欲しかった。
2.フィッシャー・ディースカウとエッシェンバッハ
この歌唱は、先生の独壇場。ピアノの伴奏のニュアンスもすごい。
フィッシャー・ディースカウは、彼の著作「シューマンの歌曲をたどって」の中
で、彼の若い頃のキャリアでの成果の一つとして、当時はほとんど忘れられてい
たケルナー歌曲集をレパートリーとして取り上げ、この曲の復活に力を貸したこ
とを誇りだと書いています。
3.トマス・ハンプソンとジェフリー・パーソンズ
このCDはケルナー歌曲集以外でシューマンがケルナーの詩につけた歌曲全曲が
入っている、というこった選曲です。これも良い歌唱です。
( 2000.04.30 稲傘武雄 )