Sehnsucht nach der Waldgegend Op.35-5 Zwölf Gedichte von Justinus Kerner |
森への郷愁 ケルナーの詩による12の歌曲 |
Wär' ich nie aus euch gegangen, Wälder,hehr und wunderbar! Hieltet liebend mich umfangen Doch so lange,lange Jahr'. Wo in euren Dämmerungen Vogelsang und Silberquell, Ist auch manches Lied entsprungen Meinem Busen,frisch und hell. Euer Wogen,euer Hallen, Euer Säuseln nimmer müd', Eure Melodien alle Weckten in der Brust das Lied. Hier in diesen weiten Triften Ist mir alles öd' und stumm, Und ich schau' in blauen Lüften Mich nach Wolkenbildern um. Wenn ihr's in den Busen zwinget, Regt sich selten nur das Lied; Wie der Vogel halb nur singet, Den von Baum und Bach man schied. |
わたしはおまえから離れたくなかった 荘厳な神秘の森よ! わたしを愛し抱きしめてくれ いつまでも、いつまでも! おまえの薄明かりの下で 鳥は歌い、銀色の泉は湧き わたしの心にはいくつもの歌が 生き生きと晴れやかに生まれた おまえの昂まり、おまえの木霊 おまえのざわめきは決してやむことはない おまえのその諧調の全てが この心に歌を呼び覚ましてくれた この広く乾いた牧草地では 全てが味気なく何ものも語りかけてこない わたしは青い空を見まわし 雲の形を眺めるだけ おまえがわたしの心に何かを訴えてきても 歌を呼び覚ますことはまれだ 樹と枝から引き離された鳥が あまり鳴かなくなってしまうように |
主語の省略などで意味がとりにくく、複数の既訳でまるで意味が違っていたり、どうにも日本語の詩になりにくいところもあり苦労しました。Sehnsuchtに「郷愁」を当てるのには異論があるかもしれませんが、普通使われる「憧れ」ではどうにもしっくりこないように思うのです。シューマンの作曲はどこかブラームスの歌曲を思わせる愁いに満ちた美しいものです。
男声では甘美な嘆き節のプライ、女声では気高く濃やかな白井さんとシュトゥッツマンが好きです。後者の濃密な声は中性的な独特の世界ですが、最終節のピアニッシモを駆使してテンポを落とすロマン的な表現は聴き物です。
( 2003.10.18 甲斐貴也 )