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Im Lenz    
 
春に  
    

詩: マーラー,グスタフ (Gustav Mahler,1860-1911) オーストリア
      

曲: マーラー,グスタフ (Gustav Mahler,1860-1911) オーストリア   歌詞言語: ドイツ語


Sag' an,du Träumer am lichten Tag.
Was willst du heut' mit dem Bangen?
Du wandelst so stumm durch Lenz und Hag,
Als wärst du von Blindheit befangen.

“Ich bin nicht blind und sehe doch nicht,
Mir ist nicht dunkel und ist nicht licht.
Könnt' lachen und könnte weinen.
Doch sagen könnt' ich es keinem.”

O sieht dich die Sonne so freundlich an,
Was sollen dir Schmerz und Reue?
Wirf ab deine Last,du traurige Mann,
Und freu' dich an Sonne und Bläue.

“Mich freut keine Sonne,mich freut kein Blau
Und hab' doch den Frühling so gerne.
Ach,die ich allein nur am liebsten erschau,
Die weilt schon lang in der Ferne.”

教えておくれ 明るい昼間にも夢を見ている君よ
今日はいったいどんな悩みがあるというんだい?
君は黙ってあるいているよ 春の森の中を
まるで目が見えないと思いこんでいるみたいに

「私は盲目ではないけれど それでも見えないのだ
 私には暗闇ではないけれど 明るくもない
 笑いもできるが 泣くこともできる
 だけどこんなこと 誰にも言えないさ」

おお 君を太陽が親しげに照らしてるじゃないか
どうして苦しんだり 後悔したりしなきゃならないのさ?
重い荷物は放りだしたらいいさ 悲しげな人よ
自分を喜ばせなくちゃ 太陽や青空のもとで

「喜べないんだ 太陽じゃ 喜べないんだ 青空じゃ
 だけどそれでも春は大好きさ
 ああ 私はただひとり あの人だけを見たいのだ
 ずっと昔に遠くへ行ってしまったあの人を」


マーラー最初期の歌曲です。のちの濃密な味わいはまだありませんが、爽やかな呼び掛けの部分などにはっとするような美しさが感じられます。春を喜んでいる人からの問いかけと、それに答える悲しみに満ちた主人公の暗く沈んだ歌が交互に繰り返されるスタイルはステレオタイプといえばそうですが、若い頃の意欲に満ちた作品と思えば十分に魅力的でしょう。もっともほとんど聴ける機会はない曲のように思えますが。
(トマス・ハンプソンが他の初期歌曲と一緒に録音しているものがかつて出ていました(Teldec))

( 2012.03.20 藤井宏行 )


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