Der Wanderer Op.65-2 D 649 |
さすらい人 |
Wie deutlich des Mondes Licht Zu mir spricht, Mich beseelend zu der Reise; “Folge treu dem alten Gleise, Wähle keine Heimat nicht. Ew'ge Plage Bringen sonst die schweren Tage; Fort zu andern Sollst du wechseln,sollst du wandern, Leicht entfliehend jeder Klage.” Sanfte Ebb und hohe Flut, Tief im Mut, Wandr' ich so im Dunkeln weiter, Steige mutig,singe heiter, Und die Welt erscheint mir gut. Alles reine Seh ich mild im Widerscheine, Nichts verworren In des Tages Glut verdorren: Froh umgeben,doch alleine. |
月の光がはっきりと わたしに語りかけ わたしに旅立つ気力を吹き込んでくれた 「これまで来た道に忠実に従い どこにも故郷を作ってはならない さもないと長い苦痛が 辛い日々をもたらすだろう それを避けるため立ち去るのだ 移り行き、さすらえ、 どんな嘆きも軽やかにかわして」 穏かなな引潮と高まる満潮を 胸の奥底に感じ わたしは闇の中を先へとさすらう 勢い良く登り、陽気に歌い 世界はわたしにとって良いものに思える 全ては清らかで 月明かりの下やわらかく見え 昼の炎熱に惑わされ 干からびることもなく 喜びに包まれ、しかし独りでいるのだ |
有名なリューベックの詩による作品と同名の歌曲。スケールの大きいそちらに比べて淡々とした地味な曲です。シューベルトの一連の「さすらい人」シリーズの詩を見ると、あまりにも傷つきやすい心を持った作曲家がその短い生涯に味わったろう孤独と苦悩の深さが思われますね。第2連の7,8行は意味がとりがたいですが、”Wiederscheine”を月の光によるものと考えてみました。こうすると非常につじつまが合うように思えるのですが。
フィッシャー=ディースカウとホッターの各2種の盤が手元にありますが、以前白井さんがシュレーゲルによるシューベルトの歌曲を特集したことがあり、この曲も歌っていました。それを含めたシューベルト集の新録音を期待したいところです。
( 2003.10.26 甲斐貴也 )